龍の鬚を蟻が狙う


あ、なんか顔が近づいてくる。
ふわふわした気持ちになる。
なんだ?
唇がやわらかくて温かい。
気持ちいい。
全部身を任せたくなる。

…ん?
ちょっと待て。

「ん!…んん!んぅ」

やばい。
キスされてる。
舌入ってきた。
歯列をなぞられ口蓋をくすぐられる。
追い出そうと舌で押し出そうとすると、逆に絡められた。
何度も何度も絡められ、たまに甘噛みされると尻がぞくんと、疼いた。
くちゅり、くちゅりと音がして、恥ずかしくて堪らなかったけど、それを忘れるくらい気持ちいい。
腰に熱が集まるような感覚がする。
さっきのとは違う優しいキスで訳がわからなかった。
優しく扱われると戸惑ってしまう。

なんなんだ。
加賀見が何をしたいのかわからない。

息が苦しくて肩を叩くと離してくれた。


「なにすんだよ!」
「ああ、無意識」

無意識だと?
無意識にキスしたのか、男相手に。
なんつーガキだ。
女に不自由してなさそうなのに。

発情期か。
考えらんねぇ。

いや、女抱きすぎておかしくなったのか。
ありうる。
そういうことなら、美形もある意味かわいそうだ。


それよりも、だ。
ここは学校の駐車場だ。
まだ残ってる人もたくさんいる。
見つかったらどうすんだ。

「続きするか?」
「しねぇよ!」

加賀見はご機嫌だ。
俺はもちろん不機嫌だ。
俺にはこいつが何考えてんのか全然わからない。


「今回のことはよくわかんねーけど、何か勘違いだったみたいだし、しょうがないから忘れてやる。お前も忘れろ。俺は帰る。降りろ」
「そうはいかねぇなあ?」
「は?」

そう言ってケータイを取りだしスライドさせ、カチカチとボタンを押し、ニヤッと笑い、画面を見せてきた。

何だ?
ものすごく嫌な予感がする。
見たくないが見ないわけにはいかない。
渋々ケータイに視線を向けた。

「ひぃっ…!」

驚いて思わず声が出た。

画面には写真が写っていた。
写真は股を広げた男が性器と腹を白く汚し、後孔には男の性器をくわえこんでいた。

目は瞑っていたが確かに俺だった。
俺を知っている人ならわかるくらいにはきれいに撮れてた。
気絶した間に撮られたのか。

そういえば、服も着てるし教室にいたはずなのに車にいる。
加賀見がやったのか。
介抱されたのか。
…絶望的な気分になってきた。


おそるおそる加賀見を見上げると、笑う加賀見がいた。
新しいオモチャを見つけたような、楽しそうな笑みだった。


「とりあえず、家まで送れ。今日はそれだけで許してやるよ」


あー、頭痛い。
これから先を考え、頭がどうしようもなく痛む。
胃もキリキリ痛み出しそうだ。

俺がなにしたって言うんだ。







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