母は自分の味方だった。強力な味方の存在を得たことはいいが、結局治にあのお願いを承諾してもらえることは無かった。けれど侑は諦めていない。





「菫ちゃんおはよう。」

『あ、侑くん。』





今日も可愛い。そんな煩悩を隠すように侑はにこりと菫に笑い、余裕綽々な態度をとる。クラスメイトに対するような雑な態度などではない、菫に対してだけ現れるそれ。思えば今までアタックしてきた中でこんなにも表情筋が緩むのは初めてだ。それなりに経験があるつもりではいたがやはり菫を前にすると全く初めてのことばかりである。

けれどおはようと笑ってくれた菫がなんだか様子を窺うような目をしていて、侑は首を傾げた。





「どうしたん?」

『え?』

「なんか聞きたそうな顔してたから。」

『ううん、なんでもないよ。気にしないで。あ、それより修学旅行どこ行くか決まった?』





冷静に考えれば確実に何かある。しかしながら菫の口から出た"修学旅行"のワードに侑は大して深く利くことはなくその話に乗っかる。そもそも侑も気になっていた菫の行動先。治はまだ決まっていないと言っていたが、応援されていないのだから嘘かもしれないと直接聞きたくて。

この際偶然を装ってでも、彼女と会う時間を作りたい。グループどころかクラスが違うのだから知らない土地でばったり、なんて可能性は限りなくゼロに近いのだから。

侑の意識はすっかり修学旅行へと逸れ、ほんの少し感じた違和感は次第に侑の頭から消えていった。





「ここおもろそうちゃう?」

『へえ、侑くんこういうの好きなんだね。』

「興味はあるかもなあ。菫ちゃんは何処行きたいん?」

『初めて行くから有名なとこかなって思ってる。』

「うんうん、行こ行こ、菫ちゃんの好きなとこ行こ。」

『うん???』

「気にせんとってな。(アカン一緒に行く頭になってたわ)」
03
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