「じゃあな、また学校で!」

「気ィつけてな。」

「あんたらもなー!」





仲良くアイスを食べて少し談笑して。楽しい時間はあっという間だった。

電車組を見送って、駅でもまた数人と別れる。残ったのは侑と治、三谷と、それから。





『結構近かったんだね。』

「意外とな。」

「でもウチもうちょいやわー」

『一人は危ないし送ってくよ?』

「それは菫も一緒やん。」

『宮も居るじゃん。』

「なんで俺が送る前提やねん。」





爽やかなワンピースを身に纏った菫だった。ワイワイと並ぶ三人の背中を見て侑は菫についての情報が増えたことに思わず口元が緩んでしまう。治と並ぶとより一層小ささが際立つ彼女は後ろ姿までもが愛らしい。

治の少し面倒くさそうな口調でも菫がそんなこと言わないでよ、と軽く治の腕を叩くと彼は渋々といった表情で承諾して。

結局侑も巻き添えを食う形で女子2人を家に送ることが確定したのだが、いくらなんでもそれは侑と治の帰りが遅くなってしまうと、菫が遠慮し始める。





『私ホント近くまででいいよ。』

「ここまで来て何言うとんねん。あれか、中原は俺が女子一人こんな夜に帰らす冷たい奴やおもてるんか。」

「さっきまでそうやったやん。急に態度変えるやん。でも菫一人はアカン。それやったらアンタが送ってもらい。」

『ダメ。なっちゃんが危ない。』





自分のことはいい、そう頑なに折れない菫に呆れた様子の治と三谷。菫から言い始めたことだがどうやら自分まで送ってもらえるとは思っていなかったようで、2人が何を言っても首を横に振るばかり。

これでは本当に一人で帰宅してしまいそうだ。確かあのジュースを買いに行った時もそうだった。遠慮しているのか頼ることが苦手なのか。こうして心配されるなんて、今まで何度もあっただろうに。その容姿であればそれなりに彼氏が居たこともある筈。

余計なことが浮かび頭を横に振る侑。そして出来るだけいつもの調子で、なんでもないように口を開く。





「あ、ほんならサムが三谷送ったれば?俺中原さん送るし。やったらそんな遅ならんやろ。」





たった今思いつきました。そんな調子の侑の声に、三人が同時に振り返った。驚いたような菫の両隣からは鋭い視線が飛んでくる。もちろん菫は気付いていない。

余計なことを言うな。そんな視線を受けながら侑は笑う。





「どう?中原さん。」

『え、いいの?』

「全然ええで。みんなで送るか俺だけかの違いやしな?」

『じゃあお願いします。ハイ、なっちゃんは宮にちゃんと送ってもらってね。』





治と三谷が何かを言う前に、菫が2人の肩を叩いて話を終わらせた。侑の折衷案で満足したようだ。

それに反して何とも言えないような、納得のいかないような表情の三谷。そして半目の治。協力的ではない二人だが当の本人にこう言われてしまえば反論も制止も出来ないのだろう。

菫がまた前を向いた瞬間に侑がニヤリと笑えば、三谷と治は心底苛立ったように眉間に皺を寄せた。





「治くん、ちゃんと去勢してるよな?」

「知らん。使いもんなるかもわからんけどな。」

「変なこと言うな!バリバリ使えるっちゅーねん!」

「………菫、110番に電話する準備だけしときや。」

「それしか頭に無いんか。恥ずかしいわ。」

『え?』

「いらんこと言うなて!」
06
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