「おめでとお侑〜!」

「絶対応援行くからなー!」

「おう!来てくれ!優勝するわ!」





無事に県予選を勝ちに抜き今年もIHへの出場が決まった。まあ、侑に言わせれば当然である。満足のいく結果ではあるが、一つ心残りだったのは。





「菫ちゃん来てくれへんかった…!」

「そうなん?誘ったんか?」

「いや誘ってへん…。」

「は?(じゃあなんで来てないの知ってんねん。)」





一番見て欲しかった相手、中原菫は予選会場に来ていなかったのだ。空き時間の合間にもしやと思って必死に目を凝らし探してみたが姿は見えず。ただ自分が見つけきれなかった可能性もあると、ふと見つけた菫と同じクラスの女子に聞こうとしたところ。

"中原は用事"

そう背後から角名の声が聞こえ侑の夢は儚く散った。

侑が菫を探していることがバレたのはさておき、一体何故彼女が来ないことを角名が知っているのか。眉間による皺をそのままに問えば"自分から言ってきた"と、なんとも侑にとって羨ましい返事が返って来たのである。





「クソッ侑くんカッコ良い!作戦失敗やんけ…!」

「そもそもまだ"宮くん"て呼ばれてなかったっけ?」

「うっさい心の声にツッコむな!」

「おもっくそ口に出とるて…。」





例えば決勝戦のあのセットアップとか、ノータッチエースとか。菫に見て欲しい所なんていくらでもあった。自分でも調子が良いと思えるほどの出来だったからこそ。

しかしながら、侑が直接誘ったわけではないのだから来ていなくとも侑に何かを言う権利などそれこそ無いというもの。





「…………IH来てくれるんかな」

「誘ったらええやん。」

「おまっ簡単に言うなや!」

「名前呼ぶより簡単やろ…」





裏でこれだけ菫ちゃん菫ちゃんと言えるのなら大丈夫だろう。そう銀島が呆れたように言うと、これ以上は何も言う気がないらしく諦めたように授業の準備を始める。

朝からおめでとうと何度も言われ上機嫌だった。けれど何より言われたかった人物にはまだ会っていない。

それもこれも同じクラスなら、真っ先に聞けたのかもしれないものなのに。そう思った瞬間、きっと侑の羨むポジションに居る片割れが憎くなった。
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