「侑ぅ、今度のオフいつ?」

「あー、確か来週やったかなあ。」

「ほんなら映画行かん?遊ぼー?」

「おー、予定無かったらな?」





フリーになった侑。そう噂が回れば自ずと群がってくる女子。そのどれもが教室に一人は居るボス的存在で、侑が仲良くなるタイプだ。愛想も良く身だしなみに抜かりはない。それの度合いはさておき。

今日も可愛らしく甘さを含んだ声で隣に並んだ他クラスの女子に、侑はにこりと笑った。

彼女はきっと自分に気がある。適当にはぐらかすような侑の言葉にも嬉しそうに微笑むのだから、確実にそうだ。顔もスタイルも中の上。このまま流されるのも悪くないと思った瞬間、侑の視界に片割れの姿が映った。





「お。サム……て、」

「侑?どしたん?」





通りがかった教室の前の廊下。開いたままの扉から見える治の居るクラス内。血を分けているからか自然と反応してしまうその銀髪に声をかけようと手を挙げかけたが、どうやら話しているらしいその姿を見て声を絞って。そしてその相手が、女子と分かった瞬間動きが止まる。

不思議そうにこちらを見上げている隣の女子など侑の視界に入っていない。今はただただ、治が笑顔を見せているその相手が気になって。

ここから会話は聞こえない。何やらスマホを向け合って談笑しているその姿は珍しく、治もあんな風に笑うのだと感心さえ覚えた。そしてあの綺麗な髪の女は一体誰なのか。こちらに背を向けている所為で顔がわからない。





「…治?」

「え?…あー、ああ」

「別にそんな珍しないやろ?治も女の子と喋るやん。」

「まあそうやな。」





侑の視線の先に気付いた彼女がそう言葉を発すれば、侑はハッとしてなんとか声を絞り出す。そういえば今は一人では無かった。彼女の言う通り、治だって人見知りではないのだから女子と会話することだってあるだろう。極たまにではあるが彼女が居た時期も知っている。

そうして視線を逸らす直前、ふわりと風に煽られた綺麗な髪に侑の視線は釘付けになった。





「………やっぱ来週のオフ無理や。」

「は!?なんで!?ちょっ侑!」





特別珍しくもない光景。それでも少しだけ見えた横顔が、侑の脳裏に焼き付いた。
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