アタックすれば振り向き好意を寄せてくれる。今までそんな恋愛ばかりしてきた侑にとって、由々しき事態である。
「さて、俺はこれからどうすればよろしいんでしょうか。」
「知らんわ」
「角名、おまえなんか案出せや。」
「あーまあ頑張って」
「案を出せって!励ませ言うてへん!」
昼食を食べ終え、そそくさと教室に戻って行った菫。去り際の菫の友人のほくそ笑んだ顔は中々に腹立たしかった。少しでも菫と話せればと、食事を終えても席を立たずにいた侑がバンバンと机を叩く。
好きな物さえ聞けないのだ、去っていく菫を追いかけるなんて侑に出来るわけがない。
「でも侑、いつもより大人しいよな。」
「そうか?」
「ゴリゴリやん。周りが引くぐらい。」
「一言多いねん。」
「緊張してるの?それはそれで面白いんだけど。」
「他人の恋を笑うな!」
「そこちゃうやろ笑ってんのは」
なんだかんだと言いながらも、それに付き合う治、角名、それから銀島。特に興味がなさそうな治はスマホを弄りながらではあるが、時折口を挟んだ。
会議のような、雑談のような。そんなイマイチ身にならない会話が続く。
「そもそも、中原が侑に興味無いんじゃどうしようもないよね。」
「〜〜…!!ひとが気にしてることを…!」
「事実じゃん。」
角名の言うことは尤もだ。あれだけ騒いで声まで掛けたのに、食事中彼女が話しているのは殆ど目の前の友人だけだった。そこにたまに角名が入る程度で、無闇矢鱈に話しかけてはこない。
ある程度話せるとは思っていただけにショックは大きい。しかしそれでも、確かに治や角名に対しての態度と自分への態度が同じかと問われれば迷わず首を横に振ってしまうくらいなのだから自分でもわかっていて。
だからこそだ。早急に、距離を詰める必要がある。
「あ、ほんなら俺のこと知って貰えばええんか。」
「………そうなる?普通。」
「アホやん。」
「侑、それは俺も違うと思うで。」
「じゃあなんやねん。どうしろ言うねん。これ以上は侑くんのメンタルが死ぬぞ。」
知って貰えば興味を持ってくれるかもしれない。そういう結論に至ったわけだが、はあっと溜息を吐いた3人に侑の額に青筋が浮かぶ。
何故そんな呆れたような反応をするのか。興味を持ってもらえれば距離が詰まるのは時間の問題だろう。
そう言えば、ついにスマホを取り出した角名が侑のメンタルにヒビを入れる。
「侑はそもそも興味無い奴の話聞くの?」
その通りだ。勿論その問いには食い気味にNOである。知ってもらうには話を聞いてもらう必要があって、それには彼女の興味が向かないことには始まらないのだから。
どうやら今まで自分が培ってきた恋愛テクニックは役に立たないらしい。侑はまた頭を抱えた。
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