クラス替えをして仲良くなったのは、友人から聞いていた東京出身の女の子だった。





『えーやっぱこっちじゃない?』

「いやこれやろ。一択。」

『まさかこんなとこで宮と対立するなんて。』

「なんやタイマンはるか?」

『発言が物騒!』





あの宮治と隣同士の席でその友人は、治に接する姿が印象的で。最初からずっと、ただの友人として接しているのがわかるからこそ好感が持てる。もちろん自分だって治が好きなわけではないが、イケメンと話したいのは普通だろう。世の中の女は大体そう。男が美人に群がるのと同じだ。

治と角名の人気者2人を相手に軽口を叩くその姿は、まさに東京の女子といったところで。





『ねえなっちゃん、なっちゃんはどっち派?』





そしてこちらに話を振る自然さもその可愛らしい笑みも、クラスの男子が高嶺の花と揶揄するのに納得がいく。だからといって話しにくいわけではなく、むしろ一緒にいて心地が良いのは落ち着きがあるせいか。

転校してくる前に彼女がどこに居てどんな環境で育ったのかは聞いたことがないが、三谷にとって菫は大切な友人であった。





「…………え、いぬ?」

『やっぱ大型犬だよね!?おっきいのフサフサしたいよね!?』

「かわええけど小さいのが良いやろ。」





そんな菫は今日も今日とて治と何やら仲良く話をしていた。そして向けられたスマホの画面にはシベリアンハスキー、治の方にはポメラニアン。

正直どちらでも良い。そんな感想をするりと口に出せば、菫はどっちもってことだよねと微笑む。興味の無さは伝わっていないようだ。それからまた2人で画像をあさるその姿は、三谷から見ればお似合いなのだけれど。

教室の外にちらりと金髪を見つけて、三谷は暢気に笑っている菫に両手を合わせた。





『なっちゃん?何拝んでんの?』

「ご愁傷様。」

『え?何?何の話?』

「……」

『宮までなんなの!?』





先日彼女が頭を悩ませていた治からの"ごめん"メッセージ。そんなもの、宮ツインズのファンであれば誰だって知っている。

今しがた教室に入ってきて治の首を締めあげた金髪、宮侑は、気になれば猛アタック。そして捉えた獲物は逃がさない。まあ長続きした試しはないのだが。

侑が菫に向かって優し気に、緊張気味に笑うのだからきっと今度のターゲットは菫なのだろう。その光景を見て何もかも理解した三谷は双子の小競り合いを横目に菫をそっと連れ出した。
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