予想の何倍も大きい水槽に、沢山の種類の海の生物。どれも目を奪われるものばかりでいつのまにか視界から友人達が消えていた。





〈言わんこっちゃない〉

《ごめんなさい》

〈だから言うたのに!そこ動きなや!〉

〈イルカショーの時間そろそろだし、プール前で集合にしよう〉





そもそも三谷がフラフラと逸れていくのを目で追っていた治と、それに声をかけた角名の視線が菫から外れたのが原因だったのだけれど。勿論逸れたのは菫の不注意である為、自分のことを棚に上げて怒っているらしい三谷には何も返さないでスマホをポケットに戻した。

3人が3人ともグループトークにメッセージを送信しているということは、もしかしたら彼らもバラけているのかもしれない。

角名のメッセージにスタンプを返した菫は手に持っていたパンフレットを見てプールの場所を確認する。運良く近くに居た為、到着するのに時間はかからなかった。

ただ辺りを見回しても頭が飛び抜けた治や角名が見つからずしばらくキョロキョロと視線を泳がせる。どうやら菫が最初らしいと、壁際に寄ろうとした時だった。

待ち合わせしている人達とは別の声が菫を呼ぶ。





「菫ちゃん、」

『……あれ、侑くん!めっちゃ偶然だね、侑くんもここだったんだ』





さらりと揺れた金髪。外の光で反射して輝いたそれの持ち主、侑を見て自然に口角が上がっていることなど菫自身気が付いていない。

先日自由行動の行き先が決まったことを侑に伝えそびれた件を思い出すけれど、なんの偶然か彼がここに居ることに上書きされた。

目を優しげに細め楽しそうに話す侑も、どうやらイルカショーを見る予定らしく。菫も合流予定であることを伝えると、一瞬考えたような顔をした侑。時間的にももうすぐ誰かが到着する頃だが、菫の腕が熱に捕まり思考が止まる。






『っ侑くん?』

「菫ちゃん、2人でイルカショー見よ!」





焦りの混じったそんな大胆な誘い。初めて触れる体温に、どうしようもなく苦しくなった。
06
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