案の定女子達に羨ましがられた。なんせあの人気の双子、宮治と同じ班なのだから。写真を撮ったら見せてくれと言われ、想像していた何倍も謙虚なお願いに菫は笑顔で頷いた。

代わってくれ、ルートを一緒にしてくれ、呼び出してくれ。想像していたそんなお願いは今のところ全くされていない。

彼女達の人柄というのが第一だろうが、三谷のさっぱりとしていて寛容な性格のおかげだと菫は思っている。





「菫はお誘いとかなかったん?」

『自由行動?』

「そう。治くん一緒やったら侑も来るんかなーっておもてな。」

『ないない。そう言うひかりちゃんは?』

「ウチも無かってん…!!でも頑張る!」





移動教室の帰り、廊下に出たところで一緒になったクラスメイトと肩を並べる菫。雑談の中で侑の名前を聞き菫は首をブンブンと横に振る。

なんとなく距離を実感してから少しだけ注意して侑を見るようになった。やはりどの彼も菫に接する時とはまるで違い、よく怒ったり軽口を叩いたりしていて。遠慮をするなと言ってくれたのは侑なのだけれど、その肝心の彼はこの調子だ。そこが少しだけ寂しい。





『ひかりちゃん侑くんと仲良いんだよね。』

「えー?侑はみんなと仲良い感じやん。たぶんあれが普通なんやろ。」

『まあそうだね。優しいもんね。』

「侑が…優しい…!?」

『そんなオバケでも見たような顔しないでよ。』

「そんなん菫だけやて…!」





ずっと聞いていたことだけれど。噂より何倍も優しい侑。そう言えば決まってこの反応を返される。それが嬉しいことのはずなのに何故かマイナスに考えてしまうのは彼の優しさの所為でもある。

優しいからこそ、治と仲の良い自分を気にかけてくれるのだと、思ってしまうから。





「あんま深く知らんけど、ああいう人って意味なく優しくするタイプやないんちゃう?」

『そういうもんかな。』

「そういうもん!まあなんかあったら相談してき!いつでも胸貸すわ!」

『イケメン…!』





確かに彼女の言う通りかもしれない。興味のないことには目もくれないとは、噂でも片割れの治からも聞いている。

ただもし治のクラスメイトだからと優しくしてくれているのなら、遠慮なんてしないで素の侑と接したいと、菫は心の中でごちた。
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