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「本当に色々とありがとう。また連絡するね。」
『こちらこそありがとう!いつでも連絡して!私もするからっ。やっちゃんもね?』
「はッはいッ!」
少しだけ低い位置にある谷地の頭をさらりと撫でる道香。ギュッと軽く清水にハグをして、まっすぐと彼女の目を見た。
1週間の合同合宿が終了。別れを惜しむ彼女達は、オレンジ色の光に照らされている。
『本当に、烏野が来てくれてよかった。私もきよちゃんとやっちゃん見ててやりたいことが出来たから。』
「後輩、のこと?」
『うん。やっちゃんみたいに一生懸命みんなのこと考えてくれるような後輩が居てくれたら安心できるし。いい加減私も先のこと考えようって思って。』
「ソンナッ!滅相も無いっ!」
『あ、でももうちょっと自信あってもいいかも』
「エッ」
「ふふ」
慌てる谷地に道香がニヤリと笑う。今年の初めから地道に探してはいたものの、どこかまだ自分がいるから、とマイペースに後回しにしていた。
けれど次の春高が、道香にとって最後となる。それなら自分が彼らの為に出来ることなんて一つしかないと、この合宿中に思いが固まったのだ。
自分にしか出来ないことが、まだ残っている。
『でもまだ引退はしないからねー!春高絶対行くからっ』
「私達も。」
『絶対だよ?一緒にエースの心得Tシャツ着ようね?』
「エースの?心得?」
『うん。春高限定なんだ。木兎が着てたやつ。』
「……それはちょっと。」
「わ、私もちょっと」
『なんで!』
冗談も交わせる程にまでなった為か、前回よりも名残惜しく別れ難い。それ故にいつまでも口が動く道香を、黒尾が呼んで。
名前のみだったが、緩く静止するような、宥めるようなそれに道香が眉を下げて笑った。
『またね、きよちゃんやっちゃん。』
「うん、またね。」
「お身体に気を付けて…!」
清水と谷地が階段を降りると、すかさず道香の隣に並んだのは黒尾。寂しげな道香の表情に、軽く撫でるように道香の頭に手を置いた。
「これでいよいよホントに春高行かなきゃいけなくなったな。」
『…当たり前でしょ。まだマネ見つけてないもん、こんなとこで引退できない』
「それもそうだな。かんわいー後輩見つけてやんねえと。」
元気良く手を振るオレンジの髪色が飛び跳ねる。その近くにいた色素の薄い髪が揺れ、こちらを見ていて。目が合えば軽く頭を下げる月島。最初より幾分も丸くなった彼に成長の文字が横切る道香。
進化と変化を見せた雛烏は、初日より何倍も大きくなって帰って行った。
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