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「気持ちよかった〜」

「アイス食べたいなー!」

「めっちゃわかる〜〜バニラアイスとポテチ交互に食べたい〜」

『最強じゃんそれ。食堂にアイスはあるんだけどなあ。』

「そうなんですか!?食べたいですね!」

「アリ〜〜」





風呂から出た脱衣所にて。キャピキャピとそんな会話が飛び交う。全員で入るには狭い為今日は道香、白福、清水、谷地の4人で訪れている。先に風呂を済ませていた雀田と大滝、宮ノ下は部屋で待機だ。

あまり長く話してはいない為、最終日はみんなで少し話をしようということになっており今日は少し急ぎ気味に風呂に入っていた。





「明日で終わりなの、ちょっと寂しいね。」

『きよちゃん可愛い…』

「私も寂しい。仲良くなれてきたのにね〜」

「わっ私もッ!」





合宿初日に比べれば、驚くほどに距離が縮まっている。選手同士もそうだがマネージャーもそうで、こうして行動を共にする度に絆が深まるように感じていた。

話しながらも寝巻き用に持って来ていたTシャツとショートパンツに着替え、しっかりと髪を乾かす。最後にクシを通せばサラサラと指をすり抜ける。





「忘れ物ない?」

「ハイ!大丈夫でありますッ!」

『オッケーですボス!』

「アイス楽しみ〜」





鞄に荷物をまとめて全員で外に出る。意識がアイスに向いている白福の背を押して外に出ると、道香は洗面台に先程使ったクシを忘れたことを思い出しあっと声をもらした。





『クシ忘れた』

「ふふ、敬礼してたのに。」

『ごめんちょっと待ってて!』





クスクスと清水と谷地に笑われながら、1人また脱衣所に入って。電気を点けてすぐに目に入ったクシを鞄に入れると、道香はまた電気を消して外に出た。





『ごめんお待たせ…あれ?』

「お疲れー」

『黒尾?』





謝罪を口にしながら振り返ると、待ってくれている筈の3人はおらず。代わりに居たのは、気の抜けた声を出す黒尾。

ぽかんと口を開けた道香が固まると、黒尾が少し気まずそうに笑った。

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