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「道香ー!ちょっと来てー!」
『はーい。…え、スイカ!?』
「そうそう!今父兄の方から差し入れって貰ったの!」
「美味しそう〜〜」
時刻は次第に夕方へと変わっていく頃。そろそろ洗濯を始めようと、体育館の隅に替えのタオルを用意している時だった。 道香の背後から声がかかり振り返ると、大きなスイカを抱えた宮ノ下。その隣には既にスイカしか見えていないらしい白福の姿があり、道香もタオルを用意してすぐ食堂へと向かった。
マネージャー全員でスイカを乗せた皿を運び、体育館で頑張っているだろう彼らにそれを届ける。
宮ノ下が元気な声でスイカの登場を知らせると、彼らはすぐに飛びついた。
「一切れチョーダイ。」
『ハイどうぞー』
「道香さーん!スイカくださーい!」
『音駒諸君こっちだよ〜おいで〜!』
真っ先に道香に声をかけたのは黒尾。それを皮切りに、音駒部員が続々と道香を取り囲む。それはそれは、まるで他校生徒を寄り付かせないかのように。
全員にスイカが行き渡る頃、マネージャーもと言っていた為道香も残った一切れを手にずっと隣に居た黒尾と体育館の壁に背を預けて座り込んだ。
『あーーーーーやっと休憩だーーーーー』
「そっちも忙しいだろ。ちゃんと水分とってんの?」
『うん、めっちゃ飲んでる。もうボトル三本目くらい』
「そりゃ安心だわ」
口に含むと、甘みが広がる真っ赤なそれ。塩も良いな、そう考えながら道香が口に溜まった種をプッと吐き出せば。狙ったかのように全く同じタイミングで黒尾も種を吐き出して、2人で顔を見合わせた。
「以心伝心」
『真似しないでよ』
「してねえよ。絶対俺の方が飛んだ。」
『は?それは違う、絶対私だって。あの種私が飛ばしたやつだし。』
「オイオイあれは俺のデス」
場所は違っても、出てくる言葉はいつもとなんら変わらない。皆の輪から少しだけ離れた所で交わされるこのやり取りに、黒尾は先程感じた黒い感情がすっと消えていくのを感じた。
陰からニヤニヤとこちらを見ている雀田と白福は無視して。
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