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「悪い悪い、送れた。」

『夜っ久ん遅い〜〜』

「ゴミ捨てだけでしょ夜っ久ん〜〜」

「キモいから止めろ。」

「揃ったし行こうか。」





悔しい結果に終わったIH予選。昨日新たに4人の心に刻み込んだ意志と思いを、今から猫又に伝えに行こうとしている。

3年5組の教室で日直だった夜久を待っていた道香達は、制服のまま職員室に向かった。





「猫又先生」

「お、来たか。」

「ハイ」

「しっかり考えたんだろうな?」

「そりゃもう。」

『考えすぎて爆睡でした。』

「ほっほっほ!」





相変わらず優しい笑みで道香達を見る猫又。きっと猫又には道香達の考えなどお見通しの筈。

ザッと4人の顔を見渡した後。一瞬空気が止まると、代表して黒尾が口を開いた。





「春高、行きマス。」

「……そうかそうか。まあお前達なら残ると思ってたけどな。こりゃああいつらも嬉しいだろ。ところで、勉強の方は大丈夫なんだよな?」

『海先生が居ます。』

「道香もなんだかんだ言って成績は良いからな。」

「進路もちゃんと考えてるんで。」

「なら、俺も全力でサポートしよう。」





全国に連れて行ってくれと、そう言った道香。それを聞いた3人が、より一層決心を深めたのは言うまでもないだろう。
頑張れと背を押してくれる彼女が、懇願するかのように言ってきたのだ。どんな一言よりも重く、思いを感じた。

進学を決めている4人にとって部活と勉強の両立の負担は計り知れないが、それでもこんなところで諦められるほどバレーへの熱量が低いわけではない。だからこその決意と決断だった。





「早速今日自主練したいんスけど」

「鍵貰えますか?」

「…ああ、鍵なら」





もう1年が持って行ったぞ。

猫又がそう続けた瞬間、4人は顔を見合わせて笑う。
早々にお辞儀をして職員室を後にし、休養日で誰もいない筈の体育館に走り出した。





『ジャージ忘れたわ!』

「制服でいいだろ。」

『夜っ久ん貸して。』

「は?なんで俺。」

『(ちょうどいいから。)…なんとなく。っ痛!』

「黒尾に借りろ。」

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