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『もうやだ飽きた参考書見たくない…』
「ナーバスだな。」
『夜久英語だけとかずるくない?一緒に数学やろうよ。』
「嫌だ。」
週末。自由登校となっている本日、ガラっとした教室で机に突っ伏する道香が居た。ここのところ家か図書館かの決まった場所で勉強をしていた為、気分転換にと黒尾、夜久、海を誘って学校へ来たというわけだ。意外にも数人、同じクラスの人物がちらほらと校内に見え考えることは同じなのかと話したのが先程。今は黒尾と海が職員室に行っており、この教室内は道香と夜久の2人のみ。
「進んでんの?」
『結構順調。まあ元々大丈夫そうな感じのとこなんだけどね。油断して落ちたら嫌じゃん。』
「意外に真面目だよな。マジで意外。」
『失礼なんだけど。てか夜久は人のこと言ってらんないからね?』
この3人の中で唯一、プロの道に進むと決めた夜久。以前から声がかかることは予想していたにしろ、実際に彼の口から聞いたときは驚きで何度か聞き返したものだ。練習はもちろん、海外に行くことまでを見据えた夜久は受験勉強をする道香達に交じって語学を学んでいるのである。
『夜っ久んカッコよすぎて引く』
「ハァ?それ褒めてんの?貶してんの?」
『最上級の褒めだよ。』
集中力が切れてしまったらしく、身体を伸ばす道香を見ながら夜久は参考書を閉じた。
こうして将来が間近に迫った今でも、正直実感は沸かない。3年も一緒に居たのだ、急に離れ離れになるなんて。
どうやら同時にそんなことを考えていたようで、夜久はばっちりと目が合った道香を見てにやっと笑った。
「まァ黒尾とは一緒に居れんだろ。」
『…っ!!な、に言ってんの大学一緒なんだから当たり前だしッ』
「ふーん?大学だけ?その先は?」
身体を大きく跳ねさせた道香の顔はほんのり赤みが刺していて。久しぶりにするこんな会話に楽しさが膨らんだのか、いつもより意地の悪い顔で夜久が笑う。
面白がられていることなんてもうとっくに理解はできているが、道香も誤魔化すことしか頭に無く教室に入って来た足音には気付いていない。
『そ、れは…まあ…一緒なら嬉しいけど…』
「何が?」
『ヒッ!!』
「ハハハハハハ!!」
「また道香からかってるの?」
突然真後ろから聞こえた黒尾の声。ニヤニヤと笑う夜久はそれに気付いていたらしく、焦る道香を見てお腹を抱えた。少し呆れたように海が聞くも、笑っている夜久には返事を返す余裕すらないらしい。
バクバクとうるさい心臓を落ち着けるように、道香は一旦大きく息を吸って黒尾を盗み見た。
平然と、首を傾げこちらを見下ろしている黒尾。その表情から見るに、どうやら先程道香が言ったことは聞こえていなかったらしい。万事休す。
そう思っていれば、道香の前にピンクのパッケージのジュースが置かれた。
「ハイ、一旦休憩な。」
『おお!ありがとう!神!?』
「立ち直りの早さはピカイチだなあ。」
「ケッ」
試験まで後3日に迫った、ある日のこと。
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