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布団に入るまで眠れるか心配だったが、やはり疲れていた身体は睡眠を求め道香はあっけなく眠りに落ちた昨日。

すっきりとした表情の道香が元気よく孤爪の背を叩く。





『研磨おはよう!』

「痛い…うるさい…」

『どう?眠れた?』

「…普通だよ。」

『うんうん、イイ感じみたいだね。』





しかめっ面の孤爪は無視の方向らしい。機嫌の良い彼女に、山本が手を合わせて拝む。

一晩置いて気持ちの整理ができた様子で、まるでただの合宿かのように楽し気に笑う道香を見て首を傾げる者が出るほどだ。しかしながらその直後、海が"昨日の夜より元気だな"と意味深な言葉を発すと、道香はしれっと目を逸らして大人しく朝食を頬張った。





「よっぽど楽しみなんだね」

『当たり前じゃん!ゴミ捨て場の決戦だよ?』

「俺も楽しみっス!」

『リエーフには旭君のスパイクはレシーブできないよねー』

「なんでそういうこと言うんすか!」

「灰羽お米飛んでるよ…」





後輩達に混ざる道香を、少し離れた席から見ている黒尾。何を考えているのか相変わらず読めないが、まあ大体はカワイイなどという煩悩である為夜久は特に気にしない。

しかし黒尾の前に座っていた海は違った。





「黒尾も、昨日より生き生きした顔してるな。」

「ブッ!」

「きったねェ!!何してんだお前!!」

「ゴメン夜っ久ん…つーか海が急に変なこと言うからダロ!」

「そうか?烏野戦だからかって意味で言ったんだけど。」

「ヤロォ…」

「いいから拭け!布巾持って来い!」





つい先程、道香にも同じようなことを言っていた。それを聞いていたからこそ、黒尾は米粒を吹き出すという動揺を見せたのだ。顔には出にくいと自負していただけあって虚を突かれたような感覚である。

とぼけたようにニコニコとしている海に口元を引くつかせた黒尾は、夜久に殴られながら飛び散った米粒をふき取った。





「大会終わっても聞くつもりはないから、惚気るなよ。」

「試合集中しろよクソ」

「マジで俺には当たりキツイね?」

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