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「ねえねえクリスマスどうするの?」
「私は彼氏とランド行くよー!」
「えーいいなあ!」
「「「道香は!?」」」
キラキラ輝く6つの瞳。純粋なそれには好奇心が詰まっているようで、道香は苦笑いをこぼす。
明日は終業式。そして明後日は彼女達の楽しみにしているイベント、"クリスマス"だ。
『部活だよ。』
「なんだあ…。あ、でも全国大会近いもんね。」
「そりゃそうか!冬休みこそ追い込み時期だし。」
「最近めっちゃ頑張ってるよね。1年の…ほら、ハーフの子。早く練習したいって廊下走って怒られてたし。」
1年、ハーフ。たった二言で誰かなんてすぐにわかる。午後練はみっちりレシーブ練にしてやろうと道香が心に決めながら、また苦笑いをこぼした。
一昨年も去年も、部活の後に部室で軽くクリスマスパーティーなんてしていたが、今年は春高に出場することもあり練習時間は朝から夜までみっちりだ。大晦日以外、年が明けるまで休みはない。
「でも本当カッコ良いと思う。ずっと頑張ってきて、念願の全国大会出場だもん。道香、すごいね」
『私じゃなくて、みんながすごいんだって。』
「いやいや!道香ありきでしょ!」
「男バスマネの子、しんどすぎて辞めたいってずっと言ってたよ?バレー部の方が人数多くてマネ一人なんだしすごいに決まってんじゃん!」
『…ほんと?私すごいの?』
「うん!」
クリスマスの話題からバレー部へと話が逸れると、途端に嬉しそうに笑う道香。心底嬉しそうなその顔を見て、クラスメイト達の口角も緩む。褒められたこともあるだろうが、部活の話で笑顔になるのは最初から。
「そんな頑張り屋さんな道香に!クッキーあげる!」
『うっそなんで!?いいの!?』
「いいんだよ〜美味しいからあげちゃう〜!」
『ありがとう今日も部活頑張れる!』
パッと、更に笑顔になった道香が嬉々とクッキーを受け取る。遠目で黒尾がバンバンと机を叩いて悶えているのを確認しながら、クラスメイト達はスマホを道香に向けて。
動物園のパンダのようだと道香が笑うと、聞こえていたらしい他のクラスメイト達も笑った。
「ぜっっったい応援行くからね!」
「クラス総出だから!」
『マジ?めっちゃ頑張るわ私!』
「団扇作ってった方がいい?道香って書いたやつ」
「ウインクして!とか?」
『アイドルじゃん。』
からかわれながらも、道香はニコニコと笑う。楽しそうなその表情に、その輪には入っていなかった黒尾が両手で顔を覆った。
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