113
『どう?美味しい?』
「美味いっス!」
「イイお嫁さんになれますね!」
『え、ホント?芝山貰ってくれる?』
「ハァ!?道香チャン!?何言ってんだおまえ!」
『いや冗談なんだけど。なんで黒尾がどもってんの?』
「アア゛ン!?」
道香特製のはちみつレモンを奪い合うように食べ、全国大会行きを決める最後の試合へと士気を高める音駒。
雑談もそこそこに全員で集合し、再び体育館へ向かって。先程と違った白いユニフォームを身に着け貴重した面持ちの芝山に、道香が笑う。
『そんな緊張しなくても大丈夫だって。』
「…え、は、あの、」
『前言ったでしょ?芝山は未来のスーパーリベロなんだから。』
「………ハイ!」
誰よりも勝ちたいと、焦るはずの3年生である道香が余裕そうに笑っている。否無理やり笑っているのかもしれないが、今の芝山には十分に効果があったようで少しだけ口角を上げた。
イイ顔になった。そう笑みを濃くし、道香は目を瞑る。隣には、苦楽を共にしてきた同級生3人。これほど心強いことは無いだろう。
「行くぞ。」
静かな黒尾の声が響くと、全員の呼吸が揃ったように一斉に体育館内へと足を踏み入れた。
prev / next
[back]
|
|