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「マジでなんであんなに可愛いんだろうか。」

「うるせェレシーブ練始めろ。」

「黒尾ー、外周10周足す?」

「なんかオマエラいつもより当たり強くね?」





落ち込むぞ。そう言った黒尾がまた2人に無視される、そんな部活開始前。

あと1、2時間もすれば日もすっかり暮れてしまう季節に差し掛かった。





「今日も安定に可愛い」

「道香が可愛いのはみんな知ってるから。」

「キャプテンがそんな煩悩でいいのかよ。」

「良い加減泣いちゃうよ?いいんだな?」





どうも今日の朝から当たりが強い。特に夜久。黒尾がそう言って夜久を見るも、彼はジロリと睨むだけで他に何も言わず。

原因は今朝の道香にあるのだが、勿論それを知らない黒尾からすれば理不尽な扱いで。ただ珍しい事でもないので、特別不快に思うことはなくまた視線を道香に戻した。





「天使だわ」

「いいからさっさとレシーブ練やんぞって。」

「サーブ黒尾の後頭部狙いだっけ?」

「実は俺って嫌われてる?」

「そのだらしない顔どうにかしろ、クソ」





そう夜久が口を尖らせた。今日一日2人と同じ教室で過ごし、黒尾の締まりのない顔を見てきた所為かもしれない。それでも尚ニヤニヤと笑う黒尾に、孤爪がドン引きした表情で距離と取っていた。





「あ、躓いたカワイイ」

「黒尾100本サーブなー」

「は、…痛ェ!」

『黒尾!よそ見してるからでしょ!集中して!』

「まだ休憩中なんですケド。」

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