Corazón | ナノ




Vuelve a sonreir


騒がしいこのアジトも静まり返る真夜中。時計は丁度3時を指していた。俺は自分自身に”ナギナギの実”の能力を使い音を消す。


「カーム」


足音が消える。俺はなまえの部屋に様子を見に行こうと思い、自室を出たところだった。



......



昼間のことだ。俺がアジトに帰ると上の階の窓からなまえの声がした。こいつはもう、ここからは出ていかないだろうと思いため息が出る。4人ものガキを救えずじまいだ。最近来たローという少年もドフィが酷く気に入っていたことから、逃すことは難しいかもしれない。

重い扉を開けて大広間のソファを目指したのもつかの間足が絡まった。幼い頃から治りやしないドジっぷりに我ながら呆れつつ一人がけのソファに腰をかける。タバコに火をつけるとコートにも火がついてしまった。


やっとの思いで火を消すと、キィと小さな音を立てて開いた扉からなまえの姿。両手で大切そうにトレーを持ちながらおかえりなさいと言う。


「これ、作ったの」


俺が”ただいま”のメモを出すと目の前のガラステーブルに置かれたトレー。その上にはうまそうなサンドイッチとカップ。口から温かそうな湯気が立っているポットだった。なまえは一つ一つ丁寧にテーブルに並べていく。


ひとりなのか、とメモを見せるとそうだよと言いながらも手は止めなかった。手際のいいガキだ。
なまえがカップに温かそうな液体を注ぐ。周りに広かった甘い香りで紅茶だと察した。カップに手を伸ばし口をつけるとなまえの注意が聞こえるも俺は盛大に口に入れたそれを吹き出した。すまないと口にしたかったが、ここでは皆が話せないと信じきっている。任務を遂行していく上ではその方が有利だったし、そもそも奴らとは話すべきことなどなかったので好都合。こんなことで声を出してしまうわけにはいかない。

黙っているとなまえは俺にハンカチを渡してくれて、またそれを黙ってそれを受け取る。こいつからすると、なんら不自然ではないんだろう。



それからは俺がサンドイッチを摘み、なまえはサンドイッチを食う俺をなんだか楽しそうに見つめる。いつもの俺の態度にひるむことを知らないここのガキは大したもんだ。普段パンはあまり食べないが、なまえのサンドイッチはとてもうまかった。
俺を見つめながらゆっくりと口を開いたなまえは今日やったことの話をして来た。ひとりでやったんだよ、とか。子どもが親に話すような内容。それに俺は返してやれる事はなくて、悔しいながらもゆるやかな時間に心が温かくなるのを感じた。


「それでね、きの、う...は...」


軽快に話を進めていたなまえの言葉が急に重くなりそちらに目を向けると苦しそうに胸を押さえるなまえ。
こいつがここに来たてから数回行った検査結果で医師が口にした言葉を思い出す。


”この子は重度の心臓病。長く生きても15だろう”


闘魚の子だとドフィが連れて来させたガキはとんでもない爆弾を抱えていて、それを聞いたにもかかわらず顔色を変えなかったドフィを酷く軽蔑したのを覚えている。

ヒュウヒュウと息をしながら倒れるなまえに俺はパニックになり、またすっ転んだ。こんな時にまでドジは発揮しなくていい。


「なまえ!!」


思わず口を突いて出たこいつの名前にしまったと思いながらも、意識を飛ばすなまえにさらに焦りを覚えた。
なまえを抱きかかえ彼女の部屋まで走る。階段なんて何段飛ばしたかわからないくらいに部屋につくまでにかかった時間は一瞬だった。


そっとベットに寝かせるも、苦しそうななまえが辛そうでかわいそうで、涙が出た。男が泣くなんて情けない。部屋中の医療書を手にとって、引き出しに入っている薬を飲ませようとするも、弱々しく息をするなまえには難しいようで。


「ごめん、ごめんな...」


謝りながらも自分の口に小さな粒を入れ水を含み、所詮口移し。女の子なのに、俺にはこんな方法しか頭に浮かばなくて。すまない、とまたボロボロと涙がこぼれた。


「ふ、ぅ...」


そのあとはクローゼットに収納してある酸素ボンベとマスクをなまえに装着し、少しづつ正常な呼吸を取り戻すなまえを見届け部屋を出た。



ドフィ達が帰ってきてからは何もなかったかのように平然と過ごし大広間で食事をする。途中大広間に顔を出さないなまえを心配する声があったので”ほっさ”とメモに綴り見せると納得したように皆は食事を再開。

ディナーが終わるとなまえがこちらに歩いてきてありがとう、と礼を口にした。よかったと思った。そして俺が声を出したことに関しては何も触れてこなかった事にも安堵した。



......



昼間のことを思い出すとブワッと汗が噴き出すほど、あの時は焦りと恐怖しかなかったと感じる。
ヒト一人を殺めるのはあんなにも簡単なのに、生かすことは難しい。ひどい世の中だ。


なまえの部屋の前にたどり着き、少し扉を開けて中を伺うとスウスウと聞こえる小さな寝息が2つ。
そういえばローのやつもこの部屋かと聞こえた2つの寝息に納得し、なまえがしっかり息をしていることに安堵。俺は扉を閉めて自室に戻った。



戻る


top
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -