Corazón | ナノ




Flevance


気づくと私は自室のベッドに寝かされていた。ベッドの横には酸素ボンベが置かれていて、私の口と鼻を覆う透明なマスク。フワフワと覚醒しきっていない意識の中で若様の声が聞こえた。

机の上には私の薬が散乱していて、床には水が溢れている。コラさんが助けてくれたのかな。


ぐるぐると思考を巡らせて胸が苦しくなる前の記憶を探るけれど、私の記憶にはコラさん駆け寄ってくれたところで途切れていた。その時聞こえた私の名前を呼ぶ声は、誰のものだったのだろう。


「コラ...さ、ん...?」


でもコラさんは話せないのだから、違う。うんうんと考えたけれど何もわからなかった。

そんなことよりも、私のお腹はぐぅ、と空腹を示す音を立てていて、大広間から漂う美味しそうな香りに誘われるように部屋を出た。




大広間のテーブルではみんながディナーを囲んでいて、私も自分の席に座る。横にはベビーファイブがいて、大丈夫?なんて優しく声をかけてくれた。


「大丈夫だよ」


大皿に盛られたパスタをお皿に取って、くるくるとフォークで巻き取り口に運んだ。

食器のカチャカチャという音や話し声で気づかなかったのだけれど、テーブルの横にはローくんがドロドロで突っ立っていた。逃げたんじゃなかったんだと思い、ローくんが来てからの日数を数えると一週間が経っていた。トレーボル様も出て行く気はないのか、なんて質問をしている。


他にも”血の掟”の話や、バッファローがピーカ様を笑ってしまい、拷問で死にかけた話なんかをローくんにしている。


「そんなもん恐くねェ」


おれは地獄を見てきたんだ、と言っていた。そこから、ローくんは”白鉛病”だということがわかって、みんなは大騒ぎ。私はうつる病気なら嫌だな、と思ったけれど、若様が白鉛病は中毒だと言っていたから大丈夫なんだろう。


ローくんはフレバンスという街から逃げてきて、死ぬのも怖くないと言っていた。もう何も信じてないとも。


その後彼はベビーファイブを泣かせて私の隣でご飯を食べ、コラさんにまた毒づいていた。それとは反対に、私はコラさんにこっそり助けてくれてありがとうとお礼を伝えた。




夜、まだ部屋のないローくんは私の部屋で寝ることになり案内をする。
私の部屋にはいろんな本が置いてあって、ローくんは少し嬉しそうな顔をしていた。


「本、すきなの?」


ローくんはいろいろな病気のことが書いてある分厚い本を広げ、私の話なんかまったく聞く耳持たずって感じで読んでいた。私も横から本を覗き見る。


「あ、!」


ばたりとページをめくる手を押さえた私にすごく嫌そうな顔を向けるローくん。なんだよと怒ったように聞くから、これは私の病気だと教えてあげた。


「え、お前...」


そのページには”Heart disease”の文字。
胸が苦しくなる病気なんだ、と言うと、そんなこと知っていると言われてしまった。だから少し悔しくて、ローくんの病気も教えてよと言うと渋々という感じで話してくれた。
病気の話は本のページを開いて、故郷フレバンスの話や家族の話までしてくれて、でも話し出すとすごく悲しそうな顔をするローくん。


「だから、だからおれは海兵が大嫌いだ」


そう言うローくんは手をぎゅっと握りしめていて爪が食い込んで血が出てしまうんじゃないかと思うくらいに。辛い話をさせてしまったと思った。


「ごめんね、ローくん」

「...ローでいい」


私が謝ったのを聞いたローくんはそう言って本を片付けてベッドに行ってしまった。
辛い話をさせてしまったことを不安に思っていた私はローくんの言葉に驚き、同時に少しローくんと仲良くなれたみたいで嬉しかった。明日からローって呼んでみよう。


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