マイディアー
「ロシー!」
いつぶりだろうか、君の姿を見るのは。
「なまえ...!」
少し離れたところから手を振る君を見た瞬間、俺の体はぶわりと熱を帯びて目から涙が溢れそうになった。
ジリジリと太陽が肌を焼くように照りつける。
手に持っていた少しの荷物を放り出して走り出す。途中転びそうになった俺を心配そうに呼ぶ声がしたけれど、それすらも包み込むように俺はなまえを抱きしめた。
「あ、やだロシー、」
恥ずかしいよと体を捩った彼女。ちらりと見た耳は可愛いピンク色に染まっていて、けれどまた彼女も諦めたように俺の背中に細い腕を回し、ぎゅうぎゅうと力を込めてくれるのだ。おかえりなさいと俺の胸元から聞こえたくぐもった声に、すっと肩の力が抜けるのを感じた。
「ただいま」
腕の力を緩めると離れたなまえの体。もっとぎゅうぎゅうしてたらよかったかな、なんて思った。彼女の手の中にはしわくちゃになった白い便箋あって読んでくれたんだと少しの恥ずかしさが頬を染める。ソレは俺が休暇前に送ったものだった。
「これ、読んだよ
ロシーが休暇に入るって聞いて、毎日読んでた」
嬉しい、とまた彼女は俺の胸に顔を押し付け、また嬉しいと声に出した。
「ありがとう、俺も嬉しいよ」
とんとんと小さな背に手を当てて、また、いつぶりだろうと考えを巡らせる。俺が海兵中将になり、本部に召集されたのは。なまえの小さな体を今までにないくらいに抱きしめて眠った夜は。彼女の温もりを感じ、思わず涙が出そうになった。
「...っ」
「え、ちょっと。ロシー!」
訂正だ。出てしまった。我慢していたものが溢れ出す。
俺の声に顔を上げたなまえは泣かないでよ!なんて俺の頬に手を当て、太陽より眩しい笑顔。目頭がまた熱くなって、グッと抑えた。
「す、まない...」
「ううん、いいの。私、ロシーのそういうところが好き」
ね?と。次は照れ笑いだろうか?彼女は強い。俺はそんな素直に気持ちを伝えられるなまえを最高に愛していた。
「ほら、はやくお家かえろう?」
差し出された小さな手。それを俺はゆっくりと、彼女の存在をしっかりと噛み締めながら握る。ああ、こんなにも俺は彼女を求めていたのだ。
またジーンと目頭が熱くなったのだが、なまえのあれ?という声にふと我に帰る。
「ロシー、あなた、荷物は?」
「...あ」
先程来た道を振り返ると無残にも散らばっている俺の荷物。放り投げてしまったときにトランクが空いてしまったのだろうか?ピンクのパンツまで。
「やだロシー。パンツが」
わかってるよなまえ。それは、言わなくてもいいだろう?
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