そういうコト
俺が好意を寄せている女は、少し変わっている。
「はあ...どこをどう刺したら、痛いのかな」
前言撤回。狂ってやがる。
こいつの今言ったセリフは、自分自身への攻撃の話だ。聞いただけでは相手への攻撃の話に聞こえるのに。
「なまえちゃん、そんなん、どこでも痛えよ」
「それは、そうなんだけどね。私が思うのは違うの」
そう言いながら、なまえは自分の腹や横腹をぐっと押さえるような動作をしている。
何が違うのかがわからない。聞いたところで理解できるとは思わないが。
「なんでいつもそんなこと考えてんだ?」
「ん、んー?なんでかな」
うーん、うーん、と唸り出した彼女はしばらく考えた後、とんでもないことを言った。
「私、きっとそういう病気なんだよ」
「は?」
「痛くて、苦しくて、逃げたくなるようなことを考えるのが好き」
おかしいでしょ、と笑うなまえ。おかしいと言われればおかしい。やっぱ狂ってんなと思ったが、それよりも俺の頭には違うコトが浮かんでいた。
「ふーん。...じゃあさ、こういうのはどうよ」
なまえがなに、と言う前に、俺は素早く彼女の両手を掴み体ごと壁に強く押し付けた。少し強くやりすぎたのか、なまえが痛そうに顔を歪める。
「ほら、どう?」
「あ...え、」
一瞬戸惑うような表情になったものの、頬がどんどん紅く染まるなまえ。
さらに両手に力を入れて、足と足の間に自身の膝を割り込ませ更に自由を奪う。
するとなまえは顔を真っ赤にさせ、目を瞑り顔を横へそらした。
やめてサッチ、と小さな声が聞こえる。
「なあなまえちゃん?お前、こういうの好きだろ?」
フルフルと頭を横に振るなまえだが、手や足には全く抵抗を示す力が入っていない。
ああ、やっぱりな。と思ってなまえへの拘束を説いた。
「あ、う...」
へたりとその場に座り込み、下を向いてしまったなまえ。ちらりと見える耳は真っ赤に染まっていた。
俺もその場にしゃがみこみ、彼女の耳へキスをした。
「そんななまえちゃんでも、俺は好きよ」
はっと顔を上げたなまえに、ニヤリとした顔を見られたかもしれない。
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