キスして
「ねえサッチ」
「どうした?」
今、私たちはサッチの自室でバラバラの行動をしている。サッチはゲームに夢中だし、私はサッチが買ってきたプラモデルを組み立て中。
「これ、付けて」
「あー、ちょいまち。あと3人」
私は出来上がった部分部分をはめ込む作業に手こずったため、サッチに助けを求める。
ちなみに、”あと3人”とは、敵をあと3人やっつけるって意味だといつもの会話から学んだ。付き合って間もない頃に同じようなことを言われた時は意味がわからなかった。
「ん、貸してみ」
サッチに二つの部品を渡すと、パチンという軽快な音。そしてもともと二つだった物は一つになって私の手元に帰ってきた。
ありがとう、と私が一言言うと再びそれぞれの作業に戻る。
他人から見れば、二人でいながら、違う作業をするというのは違和感があるのだろうか。私たちは恋人だということを知れば、本当に愛し合っているのか、だとか、そういう事を言われるのかもしれない。
でも、私はこれで幸せだ。二人で同じことをしなくとも、同じ時間を過ごしていられる。少ない会話でも、お互いの気持ちを通じ合わせる事はできる。
今だってほら、手を伸ばせば届く距離。
サッチがテレビ画面に目を向けていたって、こうやって背中に触れれば、どうしたと返事をしてくれる。
「うん、なんでもないよ」
そうして、いくらか時間がたってサッチが振り返った。
「なまえ、ちょっとイチャイチャしねえ?」
ほらね、私も今そう思ったところ。
ちゃんと愛し合ってる。
「さみしくなったの?」
「まあ、そんなとこ?」
「ふふ、私も」
サッチはへにゃりと笑って私をぎゅっと抱きしめた。
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