拾いました | ナノ




あまい!
(マルコ視点)


日が暮れてきた。なまえの歓迎会と称した宴が行われるため、皆準備に取り掛かりはじめている。
なまえはと言えば、イゾウがもってきた洋服(無論、男児用の洋服だ)に着替えさせた後、甲板から海を眺めながら目をこすっている。一日のうちに様々なことがあり疲れたのだろう。


「眠いのかよい?」
「ん...だいじょう、ぶ...?」


自分のことであるにもかかわらず疑問系だ。相当睡魔に襲われいるらしい。サッチはコック達の手伝いをしているためこの場にはいない。ビスタにでも頼むか、と甲板をフラフラと宴の準備を手伝うでもなく歩き回っているビスタに声をかけた。


「ビスタ、」
「おうよ兄弟。なまえちゃんはどうした?」


あそこだよい、と甲板で柵から足を出し今にも眠りそうななまえへ目を向けた。ビスタのことを”おもしろい”と言ったなまえだ。ビスタが一緒にいれば大丈夫だろう、とビスタになまえの側にいる事を頼んだ。


なまえちゃ〜ん、と間延びした呼び方をしなまえの隣に座ったおっさんを確認し、エースを呼んだ。

エースはなまえを風呂に入れてやったこともあり、なまえの傷の事を多少は理解しているだろう。その件について話をしておきたいと思ったのだ。


「ああ?なんだよマルコ、これから宴だぜ?」
「そんなこたあ、わかってるよい。なまえのことで話してえと思ってねい」


エースはああ、と俺が話したい内容を理解したように返事をした。この場で話をするのは難しいので、俺達はひと気の少ない廊下へ向かった。


「...で、あれだろ?その...なまえの傷の話」
「そうだよい、」
「まあ、マルコが拾ったんだ。知ってるだろうとは思ったけどよ」


あんまあいつらには、話さねえ方がいいと思う。とエースは言った。あいつらとは他の兄弟たちだろう。


「俺もそう思って、お前に話そうと思ったんだよい。なまえは一応女だ、傷のことを知られていいことはねえよい」
「ああ、だからよ、これからは俺かマルコが風呂や着替えをすればいいだろ。」
「そういうことだよい。なまえを頼むよい」


よくできた弟を持ったと思う。俺はエースの肩をポンと叩き廊下を出た。綺麗に傷が治ればいいんだけどな、と新しくできた兄弟を心配するエースはもうこの船の末っ子ではない。頼れる兄貴分になるな、と少し先の未来を見据えた。


俺の後に続きエースもひと気の少ない廊下から大勢の行き交う甲板へ出たが腹が減ったと食堂の方へ向かって行った。
なまえはどうなったか、とビスタの元へ向かうもののなまえの姿はなく胡座をかいているであろう、固まったまま動かないビスタの背中が見えた。


「何してんだよい、なまえは...」
「マルゴ、たすげでぐれねえかい」


ビスタ正面へ回ると、ビスタの膝で眠るなまえが姿を現し、気持ち悪い話し方をしたビスタはなまえにヒゲを引かれ顔が傾いていた。


「宴がはじまるまでそのままにしとけい」


うそだろ、と横目で俺を見るビスタの横に腰掛けニヤリと口角をあげた。
白ひげ海賊団、花剣のビスタともあろう男が、こんなに小さな手も払えないなんてな。俺達は新しくできた妹に相当甘くなりそうだ。


あまい!

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