「そりゃお前、AVは男のロマンやで」
「んーまあな」


昼休み、なぜだかこの男二人に相談させられるはめになってしまい返ってきた返答にまたへこむはめになる。珍しくなにもやる気になれなくて机に俯せていると、野次馬の如く謙也と白石がやってきたのだ。女であるわたしが男の気持ちもわかるはずないのにうじうじ一人で悩んでいても解決なんてするはずがない。そう腹をくくってこの二人に相談したと言うのに、もうすでにその選択に後悔しつつある。


「男のロマン‥」
「せやで!彼女のおらん俺らの女神や!」
「彼女いたら?」
「いやいやいや、彼女とプロを一緒にしたらあかん!これはこれ、それはそれや」
「謙也、なんかよく意味わかんない‥」
「つまりな、ああいう女優はただ欲を満たすためのもの。彼女は二人で愛を満たすものっちゅーわけや」


白石は上手いこと言った!みたいな顔をしたけど、なんだかなおさら悶々した気持ちになってしまった。つまりは千歳はわたしじゃ欲を満たせないからああいう女の人で満たしてるってこと?なんだかそれってすごくやだ!確かにわたしには大きな胸も千歳が喜ぶようなやらしいテクニックとかもなにもないけど、でも‥そんなのやだよ!
今だに白石と謙也は二人で討論していたけど、それ以上は頭がパンクしそうで机に俯せた。ポンポン、柔らかい手がわたしの頭を撫でていく。白石か謙也かは分からない。散々AV女優がどーのこーのと騒いでいた二人だけど、優しいところはやっぱり優しくて。急に昨日の甘えん坊だった千歳を思い出した。男の子の部分を見なければ今までみたいに楽しく笑っていられたのかな。幸せで優しくて楽しいことだけ千歳と笑って。わたしはわざと知らんふりしてきたのかもしれない。そういう部分を。

ブーブーブー。

そのときポケットで携帯が震えた。ディスプレイには千歳の名前。今メールをすれば嫌なこと書いてしまいそうで、そのまま携帯をポケットに押し込んだ。もう少しだけ時間がほしい。ちゃんと向き合える時間が。





「桜っ!」


放課後、友達と帰る準備をしていると教室に千歳が駆け込んできた。突然のことにビックリして顔をあげた。


「メール、見た?」
「‥あ」
「なんで返事くれんと?」
「‥えっと」
「ちゃんと言わな分からん」


そう言った千歳はまっすぐにわたしを見ていた。昼休みのこともあってなんとなく千歳と普通に出来そうになくて、一日くらいたてば少しは冷静になれるだろうと思い結局今までメールを返せずにいた。一日くらいメールしなくても大丈夫だろうと思っていたのにまさかこんなに千歳が怒るとは思わなかったので「ご、ごめん」と慌てて謝るしか出来なかった。千歳が怒ったところを見たのは初めてだ。いつも仲良しで有名だったせいかわたしと千歳の妙な空気にクラスがザワザワとなる。


「こっち来い」
「あっ、ちょっと千歳!」
「いいけん」


グイグイ手を引かれて廊下を抜ける。みんながわたしたちを見て振り返る。後ろから見上げた千歳はやっぱり怒ってるようで、怒ってるのはわたしなはずなのにその雰囲気に飲み込まれてしまった。

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