ぎゅぎゅぎゅうっと大きな背中に手を回してみると、普段からあったかい千歳の体はいつもよりもっと熱くなっていた。わたしの肩に寄り掛かっている千歳は普通なふりしていてもやっぱり風邪をひいているようだ。


「本当にちゃんと熱はかった?」
「ん」
「何度?」
「ん?」
「なんど?」
「‥‥38」
「高いよ!」


想像以上の熱の高さに思わず目を丸くさせると、少ししょんぼりした千歳がわたしをチラリと上目遣いで見てくる。どこで覚えたのか、うっと怒ろうとしていた言葉が喉に張り付くわたしはこの目に弱いらしい。
結局言いたいことは千歳の上目遣いに丸め込まれて、でっかい図体でくっついて甘えてくる千歳を今日だけだと存分に甘やかす。風邪ひいてるときや弱ってるときは人恋しいって言うもんね。見た目は大きくて大人っぽくてもやっぱり中身はまだまだ子供なのだ。


「ほらほら!とにかく寝て!」
「桜は?」
「ちゃんと寝るまでいるから」


不安そうな顔を見せたかと思えば子供みたいな無邪気な笑顔を見せる。わたしは千歳のこういうところが好きだ。
柔らかく笑ったあとはすぐにスースーと寝息が聞こえてきた。安心したせいか眠ってしまった千歳の顔をじっと見つめる。ふわふわでチリチリな髪の毛をゆっくり撫でてそのまま頬に触れる。男の子相手に可愛いだとか愛しい気持ちがわくなんておかしいけれど、目の前のこの男の子をどうしようもなく守ってあげたい。お兄ちゃんのようでお兄ちゃんじゃない、弟なようで弟じゃない。恋人同士なのに家族みたいな気持ちがいつもわたしをそんな気持ちにさせていた。


「マヌケな顔しちゃって」


スヤスヤ眠るその顔を見つめる。きっと今締まりのない顔してんだろうな。自分に自分で笑いながらベッドのそばに座り込む。来るときにコンビニで買ってきたヨーグルトを床に置いたままだったことを思い出しビニールごと持って冷蔵庫へ向かう。立ち上がろうとしたそのとき、机の下に置いてあった紙袋がふいに目に入った。綺麗に片付けられた部屋の机の下に置いてあったその紙袋が、妙な存在感を出していた。
ゴミなら捨てよう、そんな気持ちで手にとった。でも、中から出てきたのはゴミでもなんでもなくほとんど裸なやらしい女の人のDVDだった。

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