会いたいという気持ちを認めてしまうとどうしようもなく会いたくてたまらなくなってしまった。会ってなんでもいいから話がしたい、あのニコニコした笑顔が見たい、そばに‥いたい。そんなことを誰かに思うのは初めてだった。「あ、」。一緒にアイスを食べていた沙菜が向こう側を指さして声をあげた。指された方に振り返ると六道骸と同じ学校の生徒が数人歩いていた。ドクンッ!、びっくりするくらい心臓が飛び跳ねた。そんな自分にびっくりした。ただ久しぶりに見ただけなのに、話したわけでもないのに。


「桜、六道骸。行ってきたら?」
「で、でも」
「会いたかったんでしょ」


会いたかった、ずっと会いたかったよ。でも、六道骸があたしに会いに来なかったのはなんで?もしも最初から気まぐれで会いに来ていたのなら、あんなことがあったせいで面倒になっていたとしたら、最悪の場面ばかりが頭に浮かんで動けない。会いたかったのはあたしの方なくせに、いざとなると怖くてなにも出来ない。
そんな風に心の中で葛藤をしていると、ふいに六道骸と目が合った。またしてもありえないほど心臓が鳴った。でも合ったのは一瞬だけでそのあとすぐに六道骸は目をそらしてしまった。あ‥。その仕草に六道骸の気持ちも映されたように見えて、もう一歩は踏み出せない。


「ばかっ」


ビビってばかりのあたしの背中を後ろからバシッと叩く沙菜。あとから少しだけジンジンきて背中をさすりながら見上げる。


「怖いのはみんな一緒。だから頑張って!」
「‥沙菜」


ねっ!、満面の笑顔で後押ししてくれた沙菜に勇気をもらって、どうせこのまま離れて行くしかないのなら思い切りぶつかってきた方がましだよね。この際、六道骸の本音も本心もなにもかもを聞き出そう。最初からどうにかなれる相手でもないわけだし、いっちゃえ!あたしはバタバタ走って六道骸を追いかける。あんたが来なかった間、あたし馬鹿みたいにあんたのことばっかり考えてた。会いたい会いたいってそればっか。これも全部あんたのせい、あんたが最初にあたしにこんな変な魔法をかけたんでしょ。


「六道骸っ」
「、桜」


その背中に声をかけると、振り返った六道骸はあたしを見るなり驚いたように目を丸くさせた。突然話しかけたあたしに六道骸の周りにいた男の子たちがジロジロと見つめてくる。そんな男の子たちに構わず少し離れたとこにいたあたしの元へ駆け寄ってきてくれた六道骸に、あたしはただ会いたかったという気持ちだけが浮かんでいた。


「あ、あのさ、なんで無視したんですか」
「‥していません」
「したよ、今!」


必死に見上げると、六道骸は困ったような顔をした。あたしこれでも目だけはいい方なんだからね。目え合ったのは絶対の絶対だもん。


「無視したつもりはなかったのですが‥すみません」
「‥じゃあ、なに?」
「あんなことがあったので、なかなか貴方に合わせる顔がなくて‥」


今だに目をそらしたまま申し訳なさそうに話す。そんな目の前の男を見てキョトンとなる。それじゃあ会いに来なかったのもそれが原因てこと?合わせる顔がないからって?チラリ、とだけこちらをうかがうように見つめられてドキッとする。そんな理由予想外すぎる、どんな反応したらいいのかわかんない。ただ、さっきからずっと胸がドキドキしてる。自分の気持ちを素直に伝えることは恥ずかしい。だけど、この男の子にだけはちゃんと伝えたいって思った。
「あのね、会い‥たかったんだ、よ」
「‥え、」
「‥あの‥あんたと会わなくなってから、ずっと」
「‥‥」
「あんたに会いたかった‥」


心の中にずっとずっと積もってた気持ちを吐き出すと、すっきりした。ホッとして六道骸を見上げると、真剣な瞳でまっすぐにこちらを見つめていた。その綺麗な瞳を見つめているとなんだか気持ちよくなってくる。ゆっくり近づいてくる六道骸をかわすことなんて出来なくて、そのままあたしはキスをした。数秒たってゆっくり離れていく唇を見つめていると、右手で顔を隠した六道骸に「それ、わざとですか‥」とつぶやかれた。急に我に返ったあたしはすかさず六道骸から距離をとると、初めて経験をしたキスというものに顔を赤くさせる。


「すみません。その、つい」


困ったようにつぶやいて目をそらす六道骸に、耐え切れなくなったあたしはダッシュでその場から逃げ出した。

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