六道骸とのことでのちょっとしたいざこざはあの一回きりで、それ以降女の子たちがあたしに直接なにかをしてくることはなかった。ただ、やっぱり好きなひとが知らない女と仲良くするのが気に入らないのか、悪口は時々聞くようにはなったのだけど。でもこの間みたいなことに比べると悪口なんてまだまだ可愛いもんだと思い、特になにをするわけでも言うわけでもなく過ごしていた。そして、あの日を境に六道骸があたしの前に現れることはなくなった。元はと言えばあの男が勝手に近寄ってきていただけであって、特別約束をしていたわけでもない。なにもしなくても会いに来るし、そのことを深く考えたこともなかった。


「そういえば最近骸さん見なくなったね」
「あー‥だねー」


ツナにそう言われなんでもないふりをして返事を返す。でも気持ちは複雑にザワザワしていて。なんでもないふりをする時点で、もうそれはあたしにとってなんでもあることであって、隠せそうにない嘘をつけない気持ちがわいてくる。だって、今まで会いたいなんて思ったこともなかったし、そんなこと思う前に六道骸がなんだかんだと理由をつけて会いに来ていた。だからあたしにとって関係のない気持ちだった。関係のない、というのは間違いかもしれない。気付けない気持ちだった。六道骸に会えなくなった今、ただ純粋に思うのは六道骸のことばかりだった。










今日は仲良しの友達の沙菜と一緒に帰る約束をしていた。学校の近くに出来たアイス屋さんが今すごくはやっていて、今日はそこへ行く約束だ。あたしも初めて行くアイス屋だしずっと行きたくて楽しみにしていたので、アイス屋につくまでの道のりが待ち遠しい。曲がり角を曲がると見えてきたワゴンにカラフルなアイスがたくさん見えて、あたしたちは駆け寄った。散々ワゴンの前で迷って結局大好きなチョコミントとストロベリーミルクのダブルにした。この際お腹のちょうしは後回しにしよう。近くの公園のベンチに並んで座って食べる。


「おいしー!」
「ねー!」


散々アイスの感想を言いまくった後で、アイスを頬張っていた沙菜がゆっくりあたしに振り向いた。


「ね、桜」
「ん?」
「あんたさ、否定してたけど本当は六道骸のこと好きなんでしょ?」
「‥‥」


実は今日沙菜にこのアイスに誘われたときからこの話をされるんじゃないだろうかと予想していた。本当は沙菜にはあたしからちゃんと言おうと思ってたんだけど、まだ自分の気持ちの整理も出来てないのに上手く伝えられる自信がなかったのだ。今だってそう。好きかと聞かれると、好きだと思う。ただ、それが恋の好きかと聞かれると、まだあたし自身がその気持ちを否定してしまう。


「分かん‥ない」
「そっか」
「でも‥」


この間からずっと会いたいって思う。そう素直に伝えると沙菜は嬉しそうに笑った。あれ、あたし会いたいんだ。六道骸に。もうずっとずっと。

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