中二、春。俺の友達に初めて彼女ができた。





「憲治ー!明日部活ないらしいから遊ぼうぜ!」
「赤也、あー‥悪い!明日、彼女と約束あるんだよ」


悪い、なんて言いながらニタニタ笑う憲治のケツに俺は蹴りを一発くらわせた。痛えー!とのたうち回る憲治にざまあみろとニヤリと笑う。


「何すんだよ赤也!」
「うっせー!彼女彼女ってうぜえんだよ!」
「仕方ないだろ?彼女は大切にしないと‥」


ドガッ!!


またしてもニヤニヤしながら話す憲治に蹴りをくらわす。憲治はケツをさすりながらもまだニヤけている。そんな憲治が俺はどうしても分からない。
なにがそんなに楽しいんだ?毎日毎日、最近はずっとこの調子だ。なにをしてもニヤけて思い出し笑いして。





「憲治、憲治!」
「あー?」
「彼女できたってことは‥もうヤった?」


わらわらと集まってきた男子は次々に憲治に質問をする。ヤった?とか、感想は?とか。憲治は興味津々な男子たちの質問に得意げに応えている。
つーか、ヤるってなにをだよ。主語がねえだろ。なんで憲治は応えられんだよ。
なぜか主語なしで意思疎通して会話している男子たちを見つめて、とりあえずバカな俺は必死に意味を理解しようと黙って頭を働かす。





「男子サイテー」


ピクピクッ!


女子のかすかな非難の声に俺の耳はピクピクッと反応する。この声は、俺の天敵、木下の声だ。中二になってもなんの縁かまた同じクラスになった木下。
やべえ、と小声になる男子軍団。その真ん前に立って俺は腕を組む。


「なんだよ、なんか文句あんのか?」
「教室でそんな話しないでよ!変態!」
「はあー?そんな話ってどんな話だよ」
「そ、それは‥えっと」


珍しく木下が口ごもったのをいいことに、俺はいつもより得意げに文句を言う。


「なんだよ、答えらんないんじゃん」
「だ、だって!とにかくやめてよ!迷惑!」
「うっせー!」


ガシッ!


あまりにぎゃあぎゃあ騒ぐから、俺は木下の頭を上から鷲掴みしてやった。木下は意味分かんねー髪型の他の女子と違って肩までのボブだから鷲掴みやすい。


「やあー!やめてよ!バカ!放してー!」
「ごめんなさいって言ってみろよ」
「バカ切原!痛いんだってば!」


頭を押さえ付けると必死に抵抗する木下。だけど、楽しいから放してやんねー。中一までは身長も力も大して変わらなかったけど、今では俺のが断然でかいし力もある。ぜーんぶ俺の勝ちだ。


「やめてってばッ!!」


俺の押さえ付けていた腕は木下の馬鹿力によって勢いよく振り放された。怒ってるのか顔を真っ赤にさせた木下に一度だけキッと睨みつけられると、フンッと思い切り顔をそらされた。


「なんだよ、そんな怒んなよ。なまいきな女!」


俺は木下の後ろ姿にアッカンベーをした。なんだよ。なんなんだよ、これ。なんかすっげーもやもやする。力や身長で勝ったって、勝った気がしないのはなんでだ。
俺は、もう一度木下を見た。あいつの頭を押さえ付けていた右手をきゅっと握りしめる。
それは、俺が男であいつが女だから?

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