「クラス会するよ、桜!」
「へっ?」


昼休み。ガシッと腕を捕まれたかと思えば、美代は突然そんなことを言い出した。
美代は高校入学してすぐに仲良くなった女の子だ。小さな細い体と可愛らしい容姿にクルクル変わる表情で、わたしだけでなく今までも虜になった男の子は数知れず。目の前で告白シーンを目の当たりにしたこともあった。そんな美代だから恋愛においても積極的で、好きだと思えばお構いなしの一直線。わたしには出来ないからか、美代と一緒にいるといろいろなことで勇気をもらう。
でも、突然突拍子もないことを言い出すのは今だに慣れない。ズイズイと顔を寄せる美代にわたしは後ずさる。


「わたしたち、女子高生なんだよ!」
「う、うん!」
「わたしはともかく!桜はもっとそういうことに興味を持つべきだよ!」
「うっ‥」
「まずは身近な男子から慣れてこ!てなわけで、クラス会開催しまーす!参加する人集まれー!」


美代が一声かけると、あっという間に数人の男女が集まってしまった。楽しそうにキャッキャ笑う女の子たちを見ていると、確かに自分の中にはない色の花を持っているような気がする。同じ女の子なのになんでだろう。


「とりあえず、今日このままみんなでカラオケ直行ね!桜は参加決定だから!」
「分かったよ」


やったあ!なんて嬉しそうに笑う美代を見ると、楽しむ楽しまないは別として参加しなきゃなあって思えてしまう。可愛い女の子ってずるい。まあ絶対に男の子と付き合わなきゃならないわけじゃないし、参加するくらいならいっか。
そんなことを思いながら教科書をかばんに詰め込んでいると、さっきまでパラパラしていた雨が本格的に降り出していた。あーあ、せっかくのクラス会なのに。まあカラオケつけば関係ないけど。けど。

チラリ。

気付かれないように目線だけで高瀬くんを見つめる。野球部みんな背負ってる大きなかばんを肩にかけて、わたしと同じようにまどの外を見上げる。きゅっと眉が上がってため息をつく。わたしは高瀬くんからゆっくり目線をそらしてなんとなくくすぐったい。雨降ってると大好きな野球出来ないもんね、ちぇっとか思ってたりするのかな。クスッ。小さく笑うと同時、すれ違おうとしていた高瀬くんと目が合った。

ドクンッ!

ありえないくらい心臓が音をたてた。バクバク鳴る心臓を知らんぷりするかのように、高瀬くんは目を逸らした。目が合うくらい何でもないとでも言うように。


「高瀬くん!」


わたしのすぐ横を通り過ぎた高瀬くんに美代はお構いなしに声をかける。


「わ、なに?」
「高瀬くんもよかったらクラス会来ない?せっかくするなら呼べるだけ呼びたいし」
「あーでも俺、部活あるし‥」
「終わってからちょっと顔だすだけでも全然オッケーだよ」
「んー‥」


来られたら気まずいと思うのに来てほしいとも思う。なんて矛盾してるんだろ。でも来ないんだろうな、野球以外はあんまり興味なさそうだし。高瀬くんの背中を見つめてそんなことを考えていると、最近よく聞く田中さんの可愛い声がした。


「高瀬くん、一緒に行こうよ。たまには息抜きも大事だよ」
「田中は行くの?」
「行くよー!」
「‥じゃあ、部活終わったらちょっとだけな」
「やったあ!」


珍しい高瀬くんの参加にクラスの男子も女子も嬉しそうに笑っていた。もちろんわたしも嬉しい。同じクラスに気まずいひとなんていない方がいい。あの出来事はなかったことになったのだから、今日が仲直りするきっかけになればいいと思う。だから高瀬くんが来てくれて嬉しい。嬉しい、はずなのに。
わたしは唇をきゅっとかみしめる。溢れそうになる何かをわたしは必死に押さえ込む。なんでこんなに泣きたい気持ちになるんだろう。

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