久しぶりに千歳に触れた気がする。それは腕や体だけじゃなくて心だとかそういう見えない部分も。ぎゅっ。優しく強く、千歳がわたしを抱きしめる。苦しくないように、でも隙間なんてできないように、加減してわたしのためだけに抱きしめてくれる。


「ごめん」
「違うよ!千歳が悪いんじゃない」
「いや、ばってんとりあえず謝らせて」
「‥千歳」


申し訳なさそうな困った顔をした千歳はわたしを見ると、ふっと笑う。


「そんな悩ませとるとは思わんかった」
「だ、だって‥」
「説明しても言い訳に聞こえると思って何も言わんかったが、誤解して桜が悩むくらいなら話しとくけん」


いつになく真剣な顔をした千歳がわたしの腕を捕まえた。その表情にわたしはドキッとする。そのまま引き寄せられてわたしは千歳の胸にもたれかかる。あったかい、いつものわたしの居場所だ。


「桜が見たアレ、白石と謙也のたい」
「え?」
「帰ったらいたずらで勝手にかばんに入れられとった」
「な、なんで‥」


ぎゅっ。わたしを抱きしめた千歳の腕が強くなる。わわっ!甘えっ子な千歳は知ってるけれど、こんな男の子な千歳は知らない。いつもと違う、さっきと違う。どうしよう。千歳に気付かれないようにオロオロうろたえているとふと気付く。耳をすますと千歳の心臓の音が聞こえた。わたしよりもドキドキしているその音にホッとする。


「相談‥したけん」
「相談?」
「‥‥」
「千歳?」
「桜を俺のもんにしたい‥って」


千歳の言葉にわたしはピシッと固まってしまった。俺のもんって、わたしもう千歳の彼女だし千歳のものだよね。そういう意味じゃないのなら‥。かああ!意味を理解してからは千歳のドキドキがわたしのドキドキを煽って、どうしようもなく恥ずかしくなる。


「あんな中身どーでもよか」
「‥あ」
「俺、お前の中身が知りたい」
「え‥」
「本当はさっきこんまま‥って思ったばってん、俺は桜の気持ちも欲しいけん」


我慢した、そう言ってまっすぐ見つめる瞳がわたしを欲しがってることを伝えてる。触れている腕がギリギリの気持ちを抑えてる。怖かった。千歳はわたしなんかじゃ満足できなくて、ああいうので済ませてるんじゃないかって。でも違ってた。
どうしよう、嬉しいのか怖いのか幸せなのかよくわかんない。ただ、千歳の初めて感じる男の子の部分にドキドキしているわたしがいる。もっと、もうちょっと先が知りたいって思ってる。「桜‥」、耳元で囁かれてビクッと体が震える。こんなんでビクビクしてたら何もできない。「桜‥」もう一度名前を呼ばれて真っ赤な顔のまま見上げると、愛おしそうにわたしを見下ろす千歳がいた。


「あーもう、むぞらしかっ」
「わっ!」
「‥桜、好き」
「わたしも、好き」


ぎゅっ。抱きしめたまま世界がぐるりと回ってる。目の前には千歳。後ろには柔らかいベッド。さっきと打って変わって今度はわたしがキョトンとする。わわわわー!慌てて起き上がろうとするわたしに千歳は、ちゅっとキスをする。ちゅっちゅっちゅっちゅっ。いろんなとこにキスを落とした千歳が顔をあげる。逃がさない、と目で伝えるとギシッとベッドが音をたてた。

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