「しっかし俺にはきついなあ、コレ」

「でも似合ってますよ山崎先輩!」

「まぁずっと観察やってるからね!変装は得意なもんさ!ここで違和感あったら先輩としておしまいだよ」

「さすが山崎先輩!すごいです!」

「君もばっちりだよ。さすが俺の後輩」

「ありがとうございます」

「で、副長。計画ですけど…」



チャイナドレスを着た部下が二人、目の前に正座している。俺は目のやり場に困っていた。箱入り娘を嫁に出す親父さんの気持ちが今なら分かる気がする。ふざけんなよ何が観察だ。チャイナドレス着て敵と接触する馬鹿があるか。「そしたら俺たちが足止めを…」山崎の話なんて全く頭に入ってこない。つか何でお前までチャイナドレス着てんだよ。今回の観察は一人で十分だろ。「そこは一本道で…」ちくしょう、イライラする。



「その間に副長たちが、」

「おい山崎、脱げ」

「は?」

「えっ、副長にはそんな趣味が」

「ちげェよ!キャバクラ入り込むなら女のほうが楽勝だ、だからお前は今回でなくていい」

「ふっ、副長?」

「どうしたんですか急に」

「つか何でチャイナドレスなんだよ」

「さっき俺が説明したでしょう」

「潜り込み先のキャバクラ店が、チャイナドレス強化月間なんですよ」

「とりあえずチャイナドレスはダメだ!どうでもいいから山崎、お前はさがれ」

「えっ何でェェエ?」

「てめーみたいな野郎がそんなの着てっと吐き気がする」

「副長、ひどい」

「チャイナドレスにこだわりすぎですよ」

「こだわってねぇよ」



山崎は突然の命令にうろたえている。これなら上手くいきそうだ。山崎と一緒にこんな任務なんてさせてたまるか。ふいに俺は今までにないくらい必死な自分に気づいた。俺も馬鹿なもんだ。



「実は副長、チャイナドレス着た女の子大好き人間だったりして」

「だから男の俺が着てたら気持ち悪いとか?ぷぷっ、冗談はマヨだけにしてほしいよね」

「ですね」

「山崎ィ…」


決めた、山崎ボコボコにする。そしたら任務にも行けないだろう。腹の虫も収まるってもんだ。









く セ ク シ ャ ル




好きな女のそんな格好を他の男に見られたくないなんざ、口が裂けても言えるわけがねェ。





(110518)

素敵な企画をありがとうございました!

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