「めずらしいね」




土方がくるなんて。授業が面倒臭くなって抜け出して屋上に来てみると先客。「屋上ってベタだよねーえ」体操座りをしている彼女の隣に寝転んだ。



「お前がいるのもめずらしいな」

「まあね」



空を眺めていた彼女はこちらを向いた。くしゃり。歯がゆそうな、なぜだか苦しそうな笑顔をつくってみせた。




「ちょっと、考え事」


彼女はまた目線を空に戻す。違和感を感じた笑顔もたった一瞬のことで、いまはいつも通りの彼女の横顔だった。




「総悟か」

「お見通しかあ」




いろいろあったの。膝をかかえて彼女はぽつりぽつりと話し出す。声に元気がない。





「見ちゃったんだー」





総悟は昔からそんな奴だった。気に入った女にはすぐ手を出す。そして飽きれば捨てる。その繰り返し。だから総悟が俺の一方通行の相手と付き合い始めたと聞いたときは不快でたまらなかった。肝心な彼女は奴の女癖の悪さを承知の上で付き合ってるなんて言うもんだから尚更だ。いい加減現実を見ろ。彼女に何度そう言おうとしたことか。けれど奴の隣を歩く幸せそうな顔を見るたびに俺は何も言えないでいた。




「わたしに飽きたんだ」




膝に顔をうずめる彼女を見てかわいそうだとは思わなかった。こうなることは分かっていたはずだ。彼女も俺も、総悟も。



「綺麗な女の人だったなあ」




私なんかよりずっとずっと。しくしくと泣く身体をそっと抱きしめた。少し戸惑った反応を見せたが抵抗はしなかった。




「顔上げろよ」

「やだ」

「ったく」



顔を両手で包み込んでむりやり上げさせた。うるんだあかい目でキッと睨みつけてきた。全然恐くねーよ。真っ赤な目して何泣いてやがんだ。



「こんなに本気で人を好きになったことないって言われて」

「は?」

「こうやって抱きしめてくれたのよ」




その場の感情に身を任せてあとは口先だけ。どれほど彼女に本気だったかは知らないがでまかせの言葉にすぎない。なァ総悟、てめーは本当にガキだ。もっともそんな奴の一番になろうとした彼女もガキに変わりはねえ。無理な話だったんだ、最初から。




「忘れろよ」



くしゃり。ああこんなに苦しそうに笑う女を自分のものにしようとする俺のほうがガキかもしれねえなあ。










































































(101123)


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テーマ「人外ファンタジー」
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