「俺ァ知ってる」

「何を」

「本当はてめーも銀時のように自由に生きてェんだろ」

「……」

「今だって隙さえありゃ俺から逃げようと思ってやがる」

「……」

「何も言い返さねぇってこたァ、図星か」



ん、と差し出された猪口に酒をつぐ。べろんべろんの高杉。珍しいことに酒を飲むのをやめなかった。酔った口で何を言い出すのかと思えばくだらないことばかりほざきやがった。腹が立つ。




「なァ」

「……」

「何か言いやがれ」

「……」

「喧嘩売ってんのか」



がしゃん。酒も全部ひっくり返して高杉は私の手首を掴んだ。目の前には高杉、背中には畳。着物にこぼれた酒が気持ち悪い。



「てめーもどっか行っちまうんだろ」


俺のまわりには結局誰もいやしねェ。この男はほざくのをやめない。馬鹿かこいつは。何であたしがいつもあんたのそばにいるの。何でずっとあんたと一緒にいるの。どうしてだと思う?みんな俺から離れていく。ほらまた弱音をぽつり。やっぱり馬鹿だろこいつ。酔ってるにしてもどんだけほざくの。これ以上ほざいたら怒るからね。てめーもいなくなっちまうのは前々からわかってたぜ。悔しくて堪えきれなくて涙がでた。ばかばかばか。馬鹿高杉め。腹立つなぁ。何でこんなこと言われなきゃならないの。変に傷ついた。あーもう、いろいろ考えたら涙止まらないや。高杉に分かってもらえないのも、べろんべろんの馬鹿相手に本気で怒ってんのも、情けなくて悔しくて仕方ない。



「何か言いやがれ」



あぁわかった言ってやるよ。馬鹿でも理解できるようにわかりやすく言ってやる。酔ってるからって容赦しないんだから。


ばしん。高杉の頬に一発お見舞いしてやった。そのまま押し倒して形勢逆転の出来上がり。酔った高杉の力なんてたかが知れてる。さあ馬鹿杉、しかとその耳で聞いておけよ。




「あたしがあんたのそばから離れるだァ?そりゃあ銀時たちがうらやましいって思うこともあったわよ!でも結局今だってあんたと一緒にいる。どうしてかわかんないの?あたしはあんたと行くの、何があってもあんたについていくの!どっか行くわけないでしょ!馬鹿なあんたにはあたしがいなきゃいけないの!分かったら弱音吐くのやめろ!情けない」




好きであんたといるんだよあたしは。




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