「ごはっ」

 鳩尾に衝撃があって起きてしまった次の日の朝。瞬の鳩尾に華麗なキックをかました弥三郎は、未だに夢の世界にいるようで寝息を立てていた。
 全く、人を眠りから引きずり出しといて自分はすやすやと寝ているなんて…痛みで涙目になりながら、瞬は弥三郎を睨む。
 弥三郎は相変わらず気持ち良さそうに寝返りを打っていた。ばたん、ぱたん、ばたり。布団をけちらしながら動く様子は、まるで寝ているとは思えないほどに活発だ。
 こいつ、寝相悪すぎじゃないか?!

「っといけねぇ。飯、作らねーと。」

 一人暮らしの瞬は、朝ご飯も自分で作るし、高校の弁当もまたしかりだ。だから朝は忙しい。今日も学校はあるわけだし、折角早めに起きれたのだから、早くご飯を作ってしまおう。
 ちなみにこれは余談だが。瞬の級友の青年にも一人暮らしの奴がいるが、そいつは『賄い付きアパート』に住んでいて、いつも賄いさんの作る超絶美味しい弁当を持って来ているのだ。
 一応家事全般をこなせる瞬だが、料理の腕は高くない。なので、こういう時だけは、その友人が羨ましくなってしまう。



 そして、瞬は簡単な朝食と自分と弥三郎の弁当を作った。ここ最近は碌に料理をしていなかったからか、冷蔵庫の中身が悲惨だったので、内容も寂しいものになってしまって。どれだけ料理をしていなかったんだろう、と瞬は苦笑いをした。
 朝は屑野菜の味噌汁と飯。弁当は玉子焼きと野菜の炒め煮のみ。なお、卵は賞味期限切れだったのでシッカリと加熱して固焼きになっている。
「寂しい食卓だよなーって、でも現状できる食事では一番なんだけどもね。」
…というか、賞味期限切れを使ってしまって大丈夫なのだろうか?果てしなく不安だ。

 さて、食事もできたことだし。そろそろ寝ぼ助を起こしに行かねば。もう時計の針は、昨日瞬が目覚まし時計をかけていた時間になって…今、なった。そして目覚ましの騒々しい音が寝室から聞こえてきた、弥三郎の叫び声も一緒に。
 瞬は「しまった!」と慌てて部屋に突っ込んだ。ウッカリ、目覚まし時計を消し忘れてしまっていたとは。

『ジリリリリ!!』
「うわぁぁぁ〜」
「弥三郎大丈夫か!って、布団に隠れるのはいいけど、尻出てるぞ。」

 突然大音量で響いた目覚まし時計の音に吃驚したのか、弥三郎は布団に隠れていた。(ただし、瞬の発言通りに尻隠さずの状態で。)
 きっと隠れている本人は真面目に隠れているのだし、笑うような状況でもないのだろうけれど、その可愛らしい姿に瞬は思わず笑ってしまった。
 だって想像してほしい。時計のアラームに驚いて隠れたはずが、モフモフの布団の下からチョコンと小さなお尻が顔を出しているんだ。かわいいに決まっておろう?
 瞬は目覚まし時計をOFFにして、その可愛いく出ているお尻をポンッと軽く叩いた。弥三郎がモゾモゾと動き、布団から抜け出してくる。

「弥三郎、朝だぜ。起きろ〜」
「今の大きな音は?」
「目覚まし時計の音さ。驚いたか?」
「めざましどけい…すごい大きな音だったね。びっくりした!」

 瞬は、弥三郎に目覚まし時計を持たせてやる。弥三郎は興味津々といった様子で目覚まし時計を見ている。その様子は、本当に楽しそうで。寝癖が酷くてタンポポ爆弾みたいになっている弥三郎だったが、目の方は寝起きだと思えないくらいにキラキラ輝いていたのだった。

「さ、朝飯食いにいこうか。」
「朝餉?瞬が作ったの?」
「そうだよ。ま、あり合わせだから期待すんなよー」

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