短編集 | ナノ



 その後、料理が運ばれて来るとナイの機嫌は回復した。要は腹が減ってイライラしていただけなのだろう、本当に現金な奴である。

「オーバーそれなに?」
 前菜で空きっ腹もそこそこ満たされた頃、ナイがオーバの皿を覗き込んで来た。これはちゃっかり貰う気らしい、オーバは料理を一口大に切り分けながら答える。
「ん、白魚のオーブン焼きだってさ。食うか?」
「ひとくち、ひとくち〜」
 あ〜、と雛鳥よろしく口を開けているナイにフォークで魚を一切れ分けた。なんだか親鳥になった気分だ。
「あ、なにこれ。このソースおいしい」
 ナイは軽く口元を抑え、感動している様。
「それは…えーとズッキーニのピュレだってさ。ところでナイ、お前の食ってるの何?」
「帆立と海老と鮭のグリル焼き。はい、帆立」
 ナイのフォークで差し出された帆立を頂く、舌が火傷しそうな程に熱いが、それ以上に旨い。
 ただの焼かれた帆立から此処までの旨味を引き出させる事が出来たのか、と唸らせられる逸品だ。
「おいしいっしょ?」
「かなり旨い。」
 オーバの返答に満足気に頷いたナイ。
 この店を紹介したのは俺なのに、なんでお前がそんなに誇らし気なんだ。と、からかいたくなったが止めた。
 満面の笑みで海老を頬張るナイが余りに幸せそうだったから、そんな些細な事を気にするのもどうでもよくなったからだ。


 いつのまにか雪は止み、冬の住んだ空に幾千の星々が瞬いていた。
 暖炉の暖かい小さなレストランで、二人の夜が更けていく。


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恋愛チックな小説の練習でした。

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