芯の強い女性



「本っ当、降谷と里崎は似てるよな。」

「里崎と俺が?」



拳銃射撃訓練中、伊達がそんなことを隣で拳銃射撃訓練をしている降谷に顔は向けずそう言ってきたのだ。降谷も、そんな伊達には顔は向けず、「どこがだよ」っと誤魔化すようにフッと笑った。だが、内心「俺と里崎が似てる…かぁ…。」そんな、伊達の言葉を嬉しく思っていた。


伊達は、伊達でそんな降谷を気にすることなく話しを続ける。



「お前ら、見た目とは裏腹に中身猛獣みたいだもんな。」


ガハハっと下品に笑い言う伊達に少し苛々する降谷だったが。美依子は、確かに小動物みたいな見た目をしているのにも拘わらず柔道、銃撃、体力、学力、何に関しても群を抜いていることを理解していた。



「射撃だって、お前と里崎が群を抜いての成績だし。柔道なんて、二人とも相手に容赦ねぇし。」

「手を抜いたら相手に失礼だからな。」



降谷は、そう言いながら的に銃を向け真ん中を撃ち抜いた。そんな降谷に伊達は「ほら、この間も、…」っと続けてきたので少し鬱陶しくなった。だが、確かに美依子は自分と似ているかもしれないっと思いそんな彼女に目線を送った。


降谷は、知っていた。彼女が芯の強い女性だと言うことを。それを実感したのは年上だが同期の女性たちから嫌がらせを受けている時だった。


言い返せばいいのにも拘わらず、何も反抗もせずそこにいたのだ。何故、反抗をしないんだ?降谷は、そんな光景を目撃しそう思った。そして降谷は自分と重ねていた。


降谷も同じように成績も良く、見た目も良い為か年上の同期たちに嫌味や、時には嫌がらせをされることが度々あり言い争いをすることも多かった。


でも、美依子は自分と違った。黙って目の前で嫌味を言う同期を只々見ているだけだった。


只々、何も言わず。


 だがしかし、見ているだけではなかった。強い意思がある、強い瞳をしていたのだ。


そんな彼女に衝撃を受けていた降谷はその場を動けず助けることが少し遅くなってしまっていた。しかし、なんとかその現場の動画を撮ったと嘘を付きどうにか助けることが出来たのだ。


 そして、助けられたお礼を言う美依子に「里崎は気にしないのか?」そう、訊ねていた。諦め?何を言っても駄目だと思ったのか?そう考えもした。だが、その考えは違った。



『気にはなるけど…そんな事どうでもいいじゃない!自分は自分なんだからさ!』



 そう、満面の笑顔で言ってきたのだ。降谷は正直衝撃を受けた。本当に芯の強い女性なんだと実感したのだ。それから、前よりも彼女を目で追うようになった降谷は彼女を知るにつれて、どんどん彼女に夢中になってしまっていた。


 思ったことをはっきりと言うが周りの人の意見もしっかりと聞くことができる柔軟性も持ち。それを優先させることもできる人で、自分が言った意見をコロコロ変えることはない自分らしさを失わない女性でもあった。

警察官になりたい、という意志を強く心に持っていて。それに近づくことを目標としているので、日々努力を惜しまない信念を持っており。周りから何を言われようとも逃げようとはしないのだと降谷は感じた。


 そして、自分の発言だけでなく、自分の思いに対してもブレないで貫く意志があり。その意志に対して努力を惜しまない女性だった。だが、努力している姿を人に見せることを彼女は好まずひっそりと努力をしている人だった。


そんな彼女に好意を抱くのは簡単だった。


その好意に降谷が気付くのは直ぐで、松田と美依子が仲睦まじくしている姿を見た時に気付いたのだ。二人が仲が良いのは分かっていた。それに、松田も松田で女子と普段話さないくせに美依子とは他愛のない会話をしたり。時には、ふざけ合ったりしている姿を見て沸々と込み上げるものがあり、これが嫉妬なのだと分かったのだ。


 今だって、そうで。二人は、隣同士で楽しそうに会話をしながら、ふざけ合いながらしている姿を見て何とも言えない嫉妬心でいっぱいになっていた。


 理解はしていた。美依子が同期の男の中で松田と一番仲が良いことを。でも、それを認めたくない自分がいた。自分が一番でありたい。彼女の唯一になりたい。そう強く思うようになっていた。





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