ケンジくんが今…目の前にいる。日本に来て会うのは二回目だ。でも今日は見に来ただけで話そうとか、そう言うのは考えていない。だって、ケンジくんからしたら私は他人で知らない人だから…。


別れてから12年間…ケンジくんを片時も忘れた事はない。ずっと会えるのを待ち望んでやっと会えたのに…そんなケンジくんは私を忘れていた。正直ショックが大きかったけど…。よくよく考えたらさ、少女漫画みたいにお互いがお互いの事を忘れずに再会なんて…現実じゃない。夢見すぎてたんだ私が…。漫画のヒロインにでもなったつもりでいたのかな?そうかもしれない。


私の12年間にはずっとケンジくんがいたけど、ケンジくんの12年間には私ないなかったんだ。そう実感し悲しくなり試合を見ながら少し泣いていた。


里子ちゃんも亜子ちゃんも優しい。そんな私を懸命に元気付けようとしてくれる。試合を見終えた私は心ここに有らずって感じの状態で体育館の入り口の片隅の椅子に座っていた。





「私、飲み物買ってくるよ」

「私はタオル冷やしてくる!」





二人には本当に申し訳がない。くよくよしてたって仕方がないじゃない。戻ってきた二人にお礼を言って気持ちを切り替えよう!そう思っているときだった…。





「あ!名前ちゃんみーつかた!」

「及川くん…?」





及川くんに話し掛けられてしまった。







名前の12年間




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