朝起きて一番にカーテンを開けると、はらはらと雪が降っていた。それを見て、思わずわたしは走り出した。パジャマのまま玄関を開けると、そこに広がるのは一面の銀世界。まさにこれは、ホワイトクリスマス。

「すごい!」

と思ったけど、すごく寒い。
すぐに家の中へと戻って再び布団に潜り込んだ。
どうしよう、すごく楽しみ。

今日はクラウドとデート。本当はデートなんて大それたものじゃないけど、二人きりで会う日。
この前クラウドがわたしの街に配達にしにきてくれた時、勇気を振り絞って誘ってみた。彼女がいないってことは前に調査済みだったから、もしかしたら遊べるかもしれないと思っていたけど、本当に実現することになって、クラウドへの気持ちに拍車がかかっていた。告白なんてまだまだ出来ないけど、いいい思い出になればいいな、そんなことを思いながら。

エッジは、夜になるとイルミネーションがとても綺麗に街を彩るらしい。クラウドの住む街にも行ってみたかったことだし、夜にエッジまで行って、一緒にご飯を食べようと思う。クリスマスプレゼントも用意した。休みの日に探し回ってやっと見つけたクラウドに似合いそうなマフラー。冬のバイクは物凄く寒いと聞くから、これをしてくれたら嬉しいなあなんて思いつつ。

夜になるのが待ちきれなくて、ずっとそわそわしっぱなしだった。部屋を何度もグルグル歩き回ったり、服はどれにしようかクローゼットから全部引っ張り出して鏡の前で当ててみたり。髪型もああでもないここでもないと独り言を漏らしながら何度もやり直した。こんなに、気合入って大丈夫かな。でも、好きな人と出掛けるならちゃんとした格好がしたい。よく思われたい。


**


「お待たせクラウド!」
「ああ、俺も今来たとこ、ろ…」

目印になる記念碑で待ち合わせて、クラウドが先にいたので走って駆け寄った。わたしの声に気付いて振り返るクラウドは目を逸らしてうなじあたりを撫でていた。

「ごめん、怒ってる?」
「いや、違う…。その、なんか雰囲気が」
「え?あ、ああ…どう?」
「ん、似合ってる」
「そう?よかった!」

夕食どきなので先にご飯を食べることにした。なんか、さっきはデートなんかじゃないって思っていたけど、こうして二人で並んで歩くと周りにいる恋人たちと対して変わらない。なんか、本当にデートみたいで照れ臭くなった。




「クラウド、最近は忙しい?」
「ああ、なんだかんだ年末というのは忙しくなるもんだな」
「そっかー、大変だねえ。あ、そしたら今日も仕事だった?」
「ん、だけど軽い仕事しか受けなかったから」

わあ。それって、わたしと約束があったから?なんていうのは口にできなかった。でも、きっとそうなんだろうなと思って嬉しくなった。

暫く話しながら食事をした。正直まだ目の前にいるのがクラウドだって信じられなくて何度も彼のことを視線で捉えた。その度に彼がいることを実感し、熱が上がる。ああ、もっとたくさんの時間を彼と過ごしたい。


「わわ、きれー!」
「ん、そうだな」

お店の中から街に出ると、そこは輝いていた。降り積もった雪がイルミネーションの光を反射して、まるで宝石箱の中を歩いているかのよう。どこもかしこもキラキラで、眩しすぎるほどだった。

こんなに素敵なものをクラウドと見れるなんて!幸せ!

街を一回りして、それから二人でベンチに腰掛けて鞄に隠し持っていたプレゼントを取り出そうとした。でも、なかなか出せない。なんだか、急に緊張してきた。
本当に喜んでもらえるかも心配になってきたし、彼女でもないのにこんなことをするのは厚かましい行為かもしれない。ああ、どうしよう。でも、せっかく用意してきたんだから渡さないと意味ないし、持って帰ったら絶対に後悔する。うん、だから渡さないと。

「クラウド、あの、」
「ん?なんだ?」
「これ、クリスマス、プレゼント…」

目を丸くしたクラウドが、わたしに視線を逸らさずに手だけでそれを受け取った。そして、暫くその箱を見つめ、黙り込んでしまった。

「あ、あのね!大したものじゃないの!一応クリスマスってそういうものかなあと思って用意してみたんだけど、特に深い意味は…」
「…ふっ」
「な、」

クラウドの笑い声に顔が真っ赤になる。何でもないと、これにはなんの意味はないと嘘を言うのに必死になってつい早口になってしまった自分を恥じた。馬鹿、これじゃあ丸わかり…。

「や、嬉しいよ。ありがとう」
「へ、あ、う、うん!どういたしまして!」

緊張が最高潮になり、大声で返事をしてしまう。こんなに動揺するとは思わなかった。自分の中ではすっと渡してそれで終わりと思っていたのに。どうしてこうもうまくいかないんだろう。気付かれたかな…そうだとしたらどうしよう。恥ずかしくてクラウドの顔が見れなくて俯いて、スカートの裾をぎゅっと握った。焦りすぎ、わたし。

「名前、あのさ」
「な、なに?」
「俺も渡したいものというか、伝えたいことというか…その、あるんだ」

スカートを握った手に、クラウドの手が添えられる。…あったかい。じゃない、え、なに。

「俺、名前のことが好きなんだ」
「え、」
「だから、名前さえよければ俺と」

――付き合ってくれないか。

嘘、待って。わかんない。
クラウドが、わたしを――?

「返事はいつでもいいんだ。少し、考えてほしい。その、できたら前向きに」

考えるもなにも、わたし、クラウドのことが好き。答えなんか出てる。なのに、それが言葉に出ない。嬉しすぎて、どうしよう。

「あ、あの、わたし、」

クラウドの表情が曇る。あああ、そんな顔しないで、そんなつもりじゃないの。わたしも好きなの。わたしもクラウドが――。

「わたしも、すき」

精一杯出た言葉はしりすぼみになり、肝心なところが上手く伝えられたか心配になった。でも、だんまりなクラウドを恐る恐る見上げたら、その心配はなくなった。

「絶対に大事にするよ」

そう言った優しい笑顔が、わたしのことを包んでくれたから。




拝啓サンタさん。
最高のプレゼントありがとうございます。わたし、今すごく幸せです。








(ルカさま、リクエストありがとうございました!告白かプロポーズとのことだったのですが、初々しい感じでやってみようと思い、告白にさせていただきましたが、どうでしょう…!どきどき)
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