「ねえ、ザックス」
「ん?」
「好き」

そう言って、急に俺に口付ける彼女は本当にずるい。こんなことされて、照れない筈がない。名前は俺が照れるのをわかっていてこんなことをする。趣味が悪いと言ったらそうかもしれないが、それでも俺は彼女からの言葉と行動が幸せでならなかった。

「まーたからかってんの?」
「だって、ザックスってすぐ真っ赤になるから可愛いんだもん」

可愛いなんて言われて嬉しがる男なんて滅多にいないわけだが、何故だか俺はその少数派に入るようだった。可愛いと言われることよりも、その時に見せる名前の笑顔が可愛すぎるから嬉しいんだろう。
けらけらと笑う彼女に、少しばかり悪戯心が芽生える。

「名前」

笑いながら視線を寄越す彼女の髪を優しく撫で、耳に掛けた。露わになったそれに近付き、耳元で小さく、わざと低くした声で囁く。好きだ、と。

真面目な顔して名前の視線を捉えようとする。しかし名前の視線は泳ぎまくっていて、視点が定まっていない。林檎のように赤くなった頬を一撫ですると、ぴくりと震えるその身体。

自分でする時は余裕な笑みを向けるくせに、いざ仕返しをされると動揺を隠せない彼女。

「ず、ずるい!」
「何が?俺だって言いたい時あるもーん」
「もう!」
「仕返しだよ、仕返し」
「そんな仕返し…っ」
「いらない?」
「……いる」

思わず笑みが零れる。

何でだろう。いつまで経っても互いに相手からの愛の言葉に慣れることがない。
嬉しくて、恥ずかしくて、幸せで。

何度も繰り返しては、何度も心に響く。
言葉で確かめ合う必要なんてないくらいに互いのことを大事にしているのはわかっているのに、やめられない。
聞き慣れたとか、大事な時にしか言わないようにしようとか、そんなことは決して思わない。

思いついた時に思ったことを言う。

彼女の一挙一動に好きだと感じる。
一日に何度だって言いたい。そして、照れくさそうに喜ぶ顔が見たい。

だから俺は勿体ぶることなく告白する。

「好きだよ、名前」
「じゃあ、わたしはそれ以上にザックスのことが好き!」
「なんだって?そしたら俺はその名前の気持ち以上に名前が好きだ!」
「えー、絶対負けない!」
「俺だって負けないよ」

それはいつまでも終わることのない勝負。
どこまでも続く、延長戦。







(そらさま、リクエストありがとうございました!なんだかただのバカップルになっちゃいましたね…笑)
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