今日は俺の為にあるようなもんなのよ。ほら俺って世界一いや宇宙一の甘党だし?糖分王に俺はなる!って言っちゃうくらいだからね。あ?なるってことはまだなってないのかよって?んな細けェとこまで気にしてたらハゲるよお嬢さん。つまりさ、宇宙一糖分を愛してる俺に世の女子たちはプレゼントするべきなんだよね。だって糖分を好きでもねェ奴に渡したってその中身のやつらが報われねェってもんだろ?どうせ食われるならそいつらを愛してる俺に食われたいって思ってるはずだからさ、やっぱりどう考えても俺以外に渡す相手はいないわけよ。てことでさ、それ俺に頂戴。

よくこうくだらない発言が次々に出てくるもんだなと、ある種の感心をしたところでわたしは手に持ったそれを背中に隠した。何も聞かなければ恐らくそれは一世一代の告白と共にわたしの手を離れて銀時に渡っていただろう。そうするつもりだったし、昨日の夜一生懸命に作ったものだから喜んでもらえたらいいと思っていたけれど、なんていうか、あげたくなくなった。折角銀時のことを想って作ったというのに、銀時にとって肝心なのはその気持ちよりも中に入っているチョコレートなのだ。
馬鹿らしい。自分で食べてやる。そしてわたしは包み紙を乱暴に破り捨てた。
「おい何してんの」
「わたしのなんだからわたしがどうしようと関係ないでしょ」
慣れないことをするもんじゃないなと思う。歪な形のそれを見て少しだけ悔しくなった。勇気を出して気持ちを伝えたらこれすらも愛おしく感じてもらえるのではないかという期待をしていたけれど、そんなことを考えていた自分が恥ずかしくなった。こんなもの、チョコにしか目がいかない銀時が見たら馬鹿にされるに違いない。よくもまあこんなものを俺に渡そうと思ったなとか言われるかもしれない。悪かったわね、こんなもの人の為に作ったことなんてないのよ。あんたが初めてなのよ。初めてで要領がわからなかったのよ。初めて、なのに。馬鹿野郎。こんな人好きになるんじゃなかった。今、物凄く後悔している。

「なんだこれ、ハート?」
いつの間にか目の前にいた銀時が箱の中から一粒取り出して口に放った。あー吸収されてくわー、なんてふにゃりとしながら二つ目を摘みながらまた頬張る。
「ちょっと何勝手に食べてるのよ」
「俺にくれるんだろ?だから食ってる」
「誰があんたになんか」
「したらなんでここにいるわけ?新八にやるってか?なら道場行けばいい話だろ。それとも、ここにはどっかの誰かさんにそれを渡しにいく道の途中で立ち寄っただけか?でもよォ、それならこんな風に破いちまったりしねェよなァ?」
「う…」
「そもそも、そういうことなら真っ直ぐ向かえよって話で。俺に用があったからここに来たんだろ?ソワソワしながらよ」
実に腹立たしい。いつになく雄弁に語る銀時はわたしを見下ろしてニヤリと笑っている。きっとこの男にはわたしの気持ちも何もかも気付かれていて、それを見透かしているかのように見つめるその瞳には動揺するわたしが写っている。近付いてくる顔に反論したかったけど、出来なかった。近付かないでよ天パ、その間抜けな面見せないで、手についたチョコレートを舐めないで、そしてその手でわたしの肩に触れないで、その唇でわたしの心まで奪わないで。

「お前にも甘いもんのよさ、教えてやるよ」
そう言って銀時はまたチョコレートを一摘みする。そして次の瞬間口の中から全身に至るまで甘い感覚が押し寄せてきて、チョコレート宜しく溶けてしまいそうだった。

130212
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