(※おまけネタアニメver.のネタバレ有り)

「クリスマスパーティ、しませんか!!」

そんなしえみの発言に、いつかの誕生日パーティのことを思い出した。

燐と勝呂がパーティを24日にやるか25日にやるかで言い争っているのは放っておくとして、志摩が鼻の下を伸ばしているのに気が付いて溜め息を漏らした。

「志摩、何考えてるの?」
「いやね、勿論名前ちゃんとしえみちゃんと出雲ちゃんはサンタコスをするんやろなあと…げふ!」
「しないわよ、このエロ魔神」
「その呼び方だけは堪忍してやー!」

どうせそんなことだろうと思っていたけど、本当にそんなことを考えていたとは全く呆れた奴。子猫丸が傍で笑ってるのを見つけ、志摩はあははと後頭部を掻いた。




「出雲、あんまり乗り気じゃない?」

遠目でわたしたちの様子を傍観していた出雲に声を掛けると、頬を染めて思い切りそっぽを向かれてしまった。

「べ、別に!」
「もう、素直じゃないんだから」
「あのねえ名前、私がいつ楽しみだなんて…」
「顔に書いてあるもーん。すごく楽しみ!って」
「う、うるさいわねっ!」

そう言って彼女は教室を後にしてしまった。ありゃ、怒っちゃった?でも、きっと後で何すればいいのよ、とかなんとか言ってくるんだろうなあ。

「じゃ、じゃあ、この前と担当は同じでいいかな!」
「おう!ケーキなら任せとけ!!」

自信満々に答える燐。今回は間違いなくちゃんとしたケーキが作れると張り切っていた。

「雪男、今回は雪男も準備に参加ね!」
「僕?いいけど、何を手伝えば…」
「じゃあわたしと買い出しに行こ!ジュースとか色々重いもの持ってもらいたいし」
「名前にこき使われるのか…」
「何?やだ?」
「い、いやそんなこと言ってないよ!」
「ならいいけどー」

そんなこんなで、各々クリスマスパーティに向けて準備を開始した。


**


「名前、もうこれくらいで…」
「そう?だってみんな育ち盛りだから」
「いや、いくらなんでも買いすぎじゃ?」
「そうかなあ?」

パーティ当日。わたしと雪男は街に出て買い出しをしていた。

雪男が両手いっぱいに持つ荷物を一瞥して首を傾げる。スーパーで沢山のお菓子やら飲み物やらを買い込み、これ以上雪男の手は何も持てなそうだった。

「まあ、これでいっか!」
「うんうん、戻ろう」

安心したような顔を向けて、彼は大きく頷いた。後になって気付いたけど、そんなわたしたちのお財布はすっからかんだった。


**


教室に戻ると、机や椅子は必要最低限の数だけ並び、後は後方にまとめられていた。中央には大きなクリスマスツリーがその存在をいかんなく主張し、しえみと勝呂が飾り付けを行なっている最中だった。

「これ、どうしたの?」
「何や知らんけど、理事長がふらっと現れてこれ置いてったんや」

へえ、あの人が…。

「まあ、この前ケーキ贈ったったし、そのお礼と思えばええんとちゃうか?」
「ああ、あの失敗したやつ?」
「おい!失敗とは失礼だな!」

そこに現れたのは燐と子猫丸。
台車に乗せられたケーキを見て、再び感動を覚えた。誕生日パーティの時よりも遥かに豪華に出来上がったそのケーキに、その場にいる全員が感嘆の溜め息を漏らす。

「す、凄いよ燐!」
「だろー!これが俺の本気ってやつよ!」
「奥村くん、今回はなんとレシピもなしにオリジナルにアレンジしてやってはりましたよ」

そんな子猫丸の言葉に、しえみが目を輝かせて褒め称える。それに喜びデレデレになる燐を見て、雪男が笑う。燐は、料理が本当に大好きなんだね。いつも言ってるだけあるなあ。

「名前、お前今度は先に食うんじゃねえぞ!」
「し、失礼な!わたしがいつ!」
「俺は見逃してねえからな、この前指に掬ってペロッとしてたじゃねえか」
「い、いいじゃないそれくらいー!」
「だーめ。今回は俺の鉄槌喰らうことになるからな」
「けち…」

頬を膨らまして反抗するわたしに、燐は軽快な笑い声を上げた。まさか、バレていたとは思わなかったから恥ずかしい。

そうこうしているうちに志摩と出雲がラッピングされた袋をいくつも抱えて戻ってきた。
それを見て前回の雪男が当てたプレゼントを思い出し、思わず吹き出した。それを察したのか雪男が怪訝な表情を浮かべる。

「今回は入ってないといいね、あのメガネ」
「…名前、ちょっと黙ってて」
「ふふ、もしかして軽いトラウマ?」
「ち、違うよ!」

慌てる雪男を見て、再び思い出す。吹き出したわたしに、彼は大きく息を吐き出して肩を落とした。


**


「よーし!準備出来たな!」

燐が教室の明かりを落とすと、クリスマスツリーの電飾の輝きと、ケーキのロウソクの灯りのみになる。それでも十分みんなの顔を確認出来るほどに明るかった。

わたしはそれぞれの顔を見た。
みんなとてもいい笑顔。それを見るのがわたしは好きだった。

「俺が合図するまで、みんな消すんじゃねえぞー」
「ええから、はよ言えや!」
「るせえなあ勝呂。早く俺のケーキが食べたいのはわかるけど、焦るなって」
「やめなさいよこの馬鹿コンビ!」
「か、神木はこええなあ」
「なによ?文句あんの?」

そんなやりとりにくすくす笑うしえみにつられて、わたしも笑った。

「楽しいね、名前」
「うん、すごく楽しい」
「来年もまたやろうね!」
「もう来年の話?」
「だ、だってまたやりたいから…!」
「そだね、またやりたいね」

しえみはその言葉に華やかな笑顔を作った。

言い争いも程なくして収まり、燐がみんなの中心に立った。

「よし、いくぞ」

燐が大きく息を吸い込む。
口を閉じ、ニンマリと笑い、吐き出すようにその言葉を口にした。

「メリークリスマス!」

その合図に全員が声を揃えて繰り返し、ロウソクの火に息を吹きかけた。


来年も、こうしてみんなと楽しいクリスマスを迎えられますように。


そんな願いを込めて吹いた息が、その火を消した。



(こ、これは…)
(サンタセットや!)
(わー、早く早く雪ちゃんそのヒゲ付けて!)
(ぶふっ…!)
(名前、今笑ったね…?)
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