03

壱番魔晄炉の爆破を行なったのは、わたしの仲間ではないことは明らかだった。恐らく、わたしたちの思想に賛同した誰かが、組織の名を名乗り、反神羅活動を始めたのだろう。




「レノ、仕事だ」
「はいよ、と」
そう言われた彼は主任の元へ任務内容の確認にデスクを離れた。


「古代種のところに行ってくるぞ、と」
「ああ、例の」
「ん。俺が女のところに行くからってナマエ妬くなよ?」
「あのね、わたしが妬くと思う?」
「というよりは、俺の願望?」
「はいはい、妬いてる妬いてる。早く行ってきなさい」
レノは不満そうに舌打ちをしてオフィスを出ていった。

古代種の生き残りを確保することに、神羅は以前から躍起になっていた。しかし、その対象が抵抗しているせいもあって任務はなかなか進まなかった。神羅にとって欠かせない人物であるため、手荒な真似はできないのだろう。

わたしが調べた情報が正しければ、その古代種の生き残りは魔晄エネルギーの源であるライフストリームが豊富に集まる場所を知っているらしい。そこを古代種に案内させることにより、その地に新しいミッドガル、ネオ・ミッドガルを建設し、神羅カンパニーの更なる栄光へ導こうとしている。
もしそんなことが実現されたら、この星は本当に滅んでしまう。


**


暫くして、レノが戻ってきた。
しかし、機嫌がどこか悪そうだった。主任に任務の報告をし、気怠そうに席へと戻っていった。コーヒーでも入れてあげようと思い、席を立つ。するといつの間にかわたしの背後にいたレノが体に腕を回してきた。
「どうしたの?」
「疲れた」
「だから今、コーヒー入れてあげようかと思ったんだけど」
「こっちの方が疲れは取れるんだぞ、と」
「都合いいんだから」

不意に、オフィスに電話の着信音が鳴り響く。主任が電話を取り、数分の会話を終えた後、レノを呼び出した。恐らく次の任務が決まったのだろう。

先日の爆破事件により、タークスの活動は忙しくなっていた。新たに現れたアバランチを名乗る組織を潰すことに必死になっている。
「主任、どちらへ?」
「今から再び古代種の確保と、七番街スラムの破壊の任務に向かう」
「え、」
今、なんて…。
七番街のスラムを、破壊?

詳しく主任に尋ねると、七番街スラムにはアバランチのアジトがあり、支柱を爆破することでプレートを落下させ、スラムもろとも潰してしまうという作戦だった。更にそれをアバランチの仕業であり、神羅が救出活動にあたったと情報操作をして報道するつもりらしい。
「で、でも、そんなことをしたら」
何の罪もない人が大勢死んでしまう。たった数人の組織を潰すために、そこまで。
「これは上からの決定事項だ。行くぞ、レノ」
「さて、お仕事お仕事、と。ナマエ、また後でな」
まるでごく普通の仕事にでも出るかのようにレノが軽く言って、主任と一緒にオフィスを後にした。

主任は、レノは、何とも思わないのだろうか。確かに今までのアバランチとは違い、行動はあまりにも軽卒で過激すぎる。しかしそこまで手荒な真似をしてまで、鎮圧する必要があるのか。方法はいくらでもあるはず。あまりにも非道すぎる。それでも彼らは仕事だと言って当たり前のように上からの命令に従う。信じられなかった。

止めようにも止められない。知らせようにも知らせることができない。わたしはただこの場に留まって、目の前の書類を片付けることしかできなかった。神羅として、タークスとして。




爆音が耳に入ってきた。
慌てて窓に近付き、七番街の方を見つめる。


落下するプレート。
潰れていくスラム街。
多くの人の命が一瞬で、消えた。


本当に、本当にやってしまった。


爆破の実行犯は誰?
…恐らくレノだろう。
でも、わたしはそれを信じたくなかった。

彼にもまだ心はあると、そう信じていたかった。

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