志摩の"アレ"が、減った。

減ったと言うよりも、なくなった。お、可愛い子はっけ〜んとか、ほんま女の子ってええよな〜とか、聞かなくなったのは気のせいかな。まあ仮にも付き合ってる相手の前では失礼だってことは志摩もわかってはいるんだろうけど、ピクリとも反応しなくなったので不思議に思っていた。

「あ、志摩。あの女の子可愛くない?」
「え!どれどれ?…ってなにやらすん!」
「いや、可愛い子には目がないでしょ?」
「まあ、そやけどなあ」
「最近の志摩、変なの」
「う〜ん、そないなこと言われてもなあ」
「なによ」
「俺にもわからへん」
「あ、そう」

変。それからわたしと志摩の横を何度か可愛いなあと思う子が通り過ぎたりしたけど、反応するのはわたしばかりで志摩はずっと口が減らなかった。




そして、それとはまた別の日のこと。
休み時間にクラスの男子と話をしていた。それはごく当たり前のことだった。勿論誰も気に留めることはない。クラスメイトなのだから。誰でもやってることだ。

それなのにどうしてだろうか。いつの間にか現れた志摩に無言で腕を掴まれ連行されている。何処に行くのかも分からない。ただ、腕の力が少しだけ強くて手首が痛かった。

「ちょっと、志摩!」

思い切って吐き出した言葉に反応して、志摩がピタリと止まる。そして、振り返ることなく小さく呟いた。

「…あんなん見たない」
「え?」

低く聞こえた声は、聞き間違いなんじゃないかと思った。だって振り返った志摩はいつも通りの笑顔で、なんでもあらへん!とへらっと照れ笑いをしていたから。

「あれや!ううんとな、今日デートせえへん?」
「それならさっき言えばよかったじゃない。わざわざ連れ出すなんて」
「聞かれるの恥ずかしいやん?はは…」

ちょっとだけ焦ったような顔をしていた。
あ、もしかして、嫉妬したのだろうか。何でもないクラスメイトと話しているだけだったのに。でも、志摩が嫉妬するなんて考えられなかった。いつもふわふわしてて面倒なことが嫌いな志摩に嫉妬なんて似合わないし、そこまでわたしに対して感情を注いでるようにも思えなかった。


この前といい、やっぱり変だ。




(坊、最近志摩さんおかしないですか?)
(ほんまに。気味悪いのう)
(聞こえとるで〜)
((……))

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