「名前ちゃあん!お昼一緒に食べへん?」

昼休み、教室で出雲と昼食を取ろうとしていたところに志摩が教室の入り口から大声を上げてきた。学園で志摩と会うことはあまりなかったから、ここに来たのが意外だった。
教室内が一瞬だけ静寂に包まれる。クラスメイトの視線を一点に浴びて、わたしは羞恥心を覚えた。
それからざわざわと噂話をするかのようなざわめきがやってくる。

「なんや、みんな俺らのこと羨ましがっとるんかな?まあ美男美女カップルやしなあ」
「てか、何当たり前のように座ってんのよ!」
「ん、ええやんええやん」

出雲の突っ込みも気に留めず、はむっと焼きそばパンを口に含みながら楽しそうにしている。

「勝呂たちはいいの?」
「ん、たまには彼女と一緒に食事したいやん?そんな素敵イベント逃せないやろ?いつもの焼きそばパンが何倍も美味しくなるしなあ」

あははと無垢な笑みを向ける志摩に、終始出雲は御機嫌斜めだった。


そうして突然の嵐が過ぎ去った後、出雲は盛大にため息をついた。

「はあ…折角の昼休みが台無し」
「いいじゃない、案外楽しかったし」
「だったら二人で食べて来なさいよ」
「いいの?」
「あんなのと食べるよりかはマシ!」

それから、たまに志摩がやってきては二人でお昼を食べることが日常になっていった。




(なあ、名前ちゃん。俺にお弁当とか(作らない)
(一度は食べてみたいなあ、名前ちゃんの手作り料理)
(…はい)
(ん?)
(卵、あげる)
(おおお!じゃあ、あーん!)
(しね)
(ええ、しゃあないなあ)

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