相変わらずわたしの隣をキープする志摩に、少しだけいたずらをしてやろうと思う。この前不意打ちにドキドキさせられてしまったのだから、これはある意味仕返しだ。

「あ、教科書忘れた」
「ほんま?じゃあ俺の見せたる」
「うん、ありがとう」
「ええてええて」

授業中。異様に志摩に近付いて一つの教科書を眺めた。とは言ってもわたしはそんな志摩を見ることに集中していたのだけど。
たまにぴたりと肩が触れると、志摩はその度にびくっと身体を震わせた。あ、ごめんと何気無く言うと、へ、平気や、と妙に照れてきた。ちらと横目で志摩の顔を拝むと、少しだけ赤くなってる。

それにくぐもった笑いをしたら、後ろからガンッと椅子を蹴られた。出雲は不機嫌な顔と一緒に、は・な・れ・な・さ・い、などと口パクしてくる。再び声を上げずに笑いながら志摩から離れると、隣と後ろから息を吐く音が聞こえてきた。




「ねえ名前、本当に志摩と付き合ってるわけ?」
「んー、そうなるかな?」
「あんな奴、絶対名前のこと泣かせるんだからやめときなさいよ」
「大丈夫、泣くまで執着してないから」
「遊びもほどほどにしなさいよね、全く」

なんて不潔な遊びなのかしら、とぶつぶつ文句を言う出雲と話をしたのは、女子寮に帰る途中だった。出雲の大きな溜め息が、夕暮れに消えていく。一方でわたしは笑っていた。

130111
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