折角なので、放課後に遊ぼうと誘ってみた。そしたらありもしない尻尾を振るようについてくる、まるで犬だった。普通男子から誘うものじゃないの?と、誘ってしまった後に自問したが、もうそれはどうでもよかった。

「どこ行くん?」
「んー、どこがいい?」
「俺は名前ちゃんと一緒にいれるならたとえ火の中水の中!」
「はいはい、じゃあ甘いの食べ行こ」
「お、ええな。女の子やな〜」
「何その言い方、わたしがまるで普段女の子らしくないみたいじゃない」
「いやいやそうやない!可愛いなあって思ただけや、ほんまに」
「…まあ何でもいいけど」

何故か少しだけ照れた。
初デートやな!と張り切る志摩も、チョコレートケーキを頬張りながらペラペラと話す志摩も、どこかいつもと違う印象を受けた。上手く言えないけど、健気な感じがして、おかしかった。普段あんなに女の子にちょっかい出してるくせに、少し慣れていないような態度が新鮮だった。

「ね、志摩ってわたしのことどう思ってるの?」
「どうって、そりゃ可愛いなあと思てる。あとはなんやろなあ、神秘的?」
「え?なにそれ」
「なんちゅうか、謎。そう、謎や!女の子は謎に包まれてるくらいがちょうどええんやけど、名前ちゃんはほんまそれやね。なんや大人びてるなあと思たら急に子供みたいに笑うたりするやろ?そのギャップがまたたまらんわあ」

思いの外熱弁されて、フォークを持つ手が止まってしまった。それと同時に、意外とわたしのことを見られていたということに驚いた。志摩は広く浅くな感じかと思ってたから。でも、出雲のことを聞いてもきっと同じくらいの言葉が返ってくるんだろうなあと思って、期待はしていなかった。

「名前ちゃんは?」
「え、」
「俺のこと!」
「うーん、かっこいい(それ言っとけば喜ぶでしょう)」
「いやー照れるわー!」
「(やっぱり…)」
「でもほんま驚いたわ、名前ちゃんからあないなこと言われるなんて思てなかったさけ、むっちゃ嬉しいわ!」
「うん、まあ、(予想外にウブだ)」

ケーキを食べ終え、飲み物が尽きるまで色々話をした。主にわたしのことを聞かれ続けたのだけど、誕生日とか血液型とか家族構成とか実家はどこかとか、もう色々。別段答えを渋るような内容でもなかったから淡々と答えていくと、それを一生懸命に聞き取る姿が目の前にあった。

終始笑顔の志摩を見て、自然とわたしの顔も綻んだ。なんだ、だだのたらしだって思って呆れてばっかりだったけど、悪い奴じゃなさそうじゃん。

そうして、飲み物もなくなり会計を済ませて帰ろうとした時。

「ええよ名前ちゃん。ここは俺が出すさかい」

きっと、それが男だとか思っているんだろう。高校生なんだから無理しなくてもいいのに、と思ったけど折角の志摩の好意だ、甘えておいた方が志摩にとってもいいだろう。

「ありがと志摩」

それを聞いた志摩の笑顔に、少しだけ胸が音を立てた。




(よし、名前ちゃんにいいとこ見せたった!)
(バレバレだよ志摩)

130108
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -