それはほんの出来心だった。 「名前ちゃ〜ん、今日も可愛ええなあ」 「はいはい、ありがとう」 「またそのつれないところもたまらんわ〜。こんな可愛ええ子と付き合えたらええのになあ」 「じゃあ付き合ってみる?」 「ぶはっ…!え、名前ちゃん、え…!」 「どうしたの?」 「ちょ、待って、俺今混乱してる」 「嫌ならいいけど」 「や、そないなことあらへん!お、俺でええの?」 「嫌じゃなきゃ言わないよ」 「ま、マジですか…じゃ、じゃあ…」 「ん、よろしくね」 そんな感じで、志摩と付き合い始めた。 志摩が動揺している様子がなんとも滑稽でならなかった。少しは可愛いところもあるんだなと、彼の顔を思い出して笑った。案外耐性ないのかも? その日のうちに出雲に報告したら、案の定真っ赤な顔してなななな何であんな奴なんかと!と大声で叱られた。 楽しそうだから、いいかなって。大して好きでもなんでもなかったけど、遊び相手にはちょうどいいかなって。ただそれだけの理由だった。毎日のように口説かれるのも面倒だし、出雲だってそう思っていただろうから。 不純!不潔!そんな罵倒を浴びせられまくっても、わたしは笑っていた。 (坊ー!俺、彼女できた!) (寝言は寝て言えや) (そんなんちゃうて!名前ちゃんと!) (…マジかよ) (マジや!) 121230 |