ああああああああ。くそうぜえ。うぜえうぜえうぜえ!今日はあいつが学校にいないから静かに一日を終える事が出来ると思っていたのに、そいつに成り代わるようにこいつが現れる。二人で現れた時なんかもう最悪だ。俺が一体何をした。何もしちゃいねえ。俺の何が不満なんだ、俺の何がいけない。

「シーズーちゃあん」
「……」

つい、拳に力が篭る。しかし、それをこいつの顔面にぶち込む事はできない。あいつなら容赦なくやってやるのに。くそ。
俺は、陽気な声の主を見たくもないとばかりに廊下を歩く足を速めた。しかし、それに合わせるようにそいつも足を速めて距離が一向に離れていかない。

「ねえ、シズちゃんてば」

うるせえ。その呼び方で俺を呼ぶな。てか、その前に俺に話しかけるな関わるな。あいつの次にお前とは関わりたくない。
お前と関わるとろくな事がない。それは目に見えている。

「なんで無視するの、シズちゃん」

あああああ。もう我慢の限界だ。

「何なんだ?ああ?」

振り返って俺につきまとうそいつの胸倉を思い切り掴んだ。身長差でそいつの身体が浮く。苦しいはずなのに、こいつの表情は何一つ変わりはしない。あいつと同じような、クソむかつく笑顔を俺に向けてされるがままでいる。
そんな俺たちの様子を見て逃げ出す連中がいたが、俺はそんなことどうだってよかった。ただ、目の前にいるこいつの、この女の存在自体が気に食わねえ。

「何って、わかってるでしょ?」
「しつけえんだよ、手前は」
「だって、この前のは返事になってないよ。好きって言ったのに、うざいって可笑しいでしょ?好きか嫌いかで答えてもらわないと私も納得しないんだけど」

うぜえもんはうぜえ。それ以外のなにものでもない。ただ、うぜえ。こいつを見てると、あいつの事を思い出さざるを得なくなる。あいつと一緒に楽しんで俺を嵌めようとするくせに、何が好きだ。好きなら好きなりの態度ってもんがあるだろうが。それをこいつはなんもわかっちゃいねえ。本当に意味わかんねえ。

「ねえ、聞いてる?」
「……うぜえ」
「まーたそうやってはぐらかすんだから。ちゃんと返事してくれるまで聞き続けるよ?それが嫌なら早く言ってよ」

投げ飛ばしてやりたくなった。
窓から放り投げて、そのままいなくなってしまえばいいとさえ思った。しかし、それができない。一向に歪まないこいつの表情も見飽きた。こいつに何をしても無駄だってわかってはいたが、こうも顔色一つ変えないとなると気持ちが悪い。そして、俺は無駄な体力を使うことをやめた。

「あれ、今日は大人しいんだ。めずらしー。あ、でも、私には一度も暴力振るわないよねシズちゃんって。なんでかな。ねえ、シズちゃん」

煩え。黙れ。
なんで俺なんだ。どうせあいつが何か企んでるに違えねえのはわかる。そこまでして俺をどうにかしたいのか?何が楽しい。何が――。

「今日も教えてくれないの?もう、今日はいいや。また今度聞くからそのときにはちゃんと返事してよね?そうしないと私も困るから」

笑いながら身だしなみを整えるこいつがくそむかつく。また拳を作って、でも、それをなんとか抑えつけようと下唇を噛んだ。震える拳の行き場所が、どこにもない。

「じゃ、またね」

くそ。
なんでこいつなんだ。

――折原名前。
なんで、こいつなんかを。

121221
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