怖い、夢を見た。

星痕症候群。
クラウドが蝕まれていた病気。

その病気で、彼がいなくなってしまう、そんな夢。現実では、クラウドは病気が治って今もわたしの隣で寝ているけど、あのときは本当に怖かった。わたしに気を使ってか、彼は弱いところを見せようとしなかったけど、時折見せる苦痛の表情にわたしも苦しんだ。
彼が苦しんでいるのにわたしは何もできなかった。もう過去のことだけど、そのときの恐怖は消えていない。いつか、わたしの前から彼がいなくなってしまうんじゃないか。考えても意味のないことが、頭から離れなかった。

現実に戻ろうと、目を擦ると手に水滴の感触がする。
…夢で泣いてたんだ。


起き上がって隣で眠っている彼を見下ろす。規則正しい寝息を立てている。生きている証。彼の呼吸を聞くと、少しだけ安心した。
やんわりと布団から出た腕を撫でる。今は病気の跡もない。

その仕草にクラウドは身を捩らせ、わたしの方へ寝返りを打つ。
無意識か目を覚ましたのか、彼の腕がわたしの方へと伸びてきて。それに応えようと再び体を寝かせてクラウドの胸に擦り寄った。
力のない腕がわたしの背中に回る。心地がいい。
こうしてクラウドの体温を感じると安心する。いつまでも触れていたくなる。



先ほどの夢の記憶が蘇って、わたしはまた恐怖に襲われた。
目の前のクラウドを確かめるように強く抱きしめる。胸に顔を埋めて、足を絡ませて、全身で彼を感じたかった。

離れたくない。

「クラウド」

名前を呼ぶ。返事はない。

「クラウド…」

顔を上げる。彼の唇は開かない。

「クラウド…っ」

答えてほしかった。この不安を打ち消してほしかった。
名前を呼んでほしい。いつものように優しい笑顔で愛しそうにわたしの髪を撫でて、口付けを落としてほしい。

欲にまみれたわたしは彼の体を大きく揺さぶった。

「ねえ…」

揺れる体に不快感を覚えたのか、眉間に皺を寄せて、小さく唸る。それでもやめられなかった。心地よく眠る彼の邪魔をすることに対する罪悪感も感じないほどに、余裕がなかった。



「ん…名前…?」



僅かに開いた細い瞳がわたしの姿を探している。それに少し喜びを感じてまた少し揺さぶった。

「どうした…」

ぎゅっと腕に力が篭る。クラウドの顔が見えなくなる。

「また、見たのか…?」

僅かに体を放して、まだ夢の中にいるような瞳がわたしに向けられる。


そう、これが初めてじゃなかった。

ただの夢とわかっていても、感じる不安は消えなくて。その度にわたしは彼を求めた。彼はそこにいるのに、いなくなってしまったことばかり考えて、不安をぶつける。困るだけなのに。



「大丈夫だよ、名前」


そんなわがままにも彼は優しく応えてくれて、不安を消すようにわたしが求める全てのことを彼は与えてくれる。

優しく撫でられる頬。向けられる微笑み。顔が近付いて触れる、温かい唇。
全てが愛おしかった。いつまでもわたしに与えてほしかった。



「俺はここにいる。いつでも名前の傍にいるから」



肌に触れる細い指。
くすぐったいけど、彼を感じてる証拠。
彼はこんなにも優しくわたしに触れてくれる。

けど、再び触れる唇は優しいというよりも乱暴で、より一層彼を感じてわたしは涙を流した。
それに気付いて彼の熱い舌が涙を拭ってくれ、するりと移動して唇をなぞる。
高揚とした気持ちが、自然と体の熱を上げていく。



いつまでも彼に触れられていたかった。
いっそのこと、このまま彼とわたしの熱で溶けて、クラウドと一つになりたかった。

121113
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -